2011 Fiscal Year Annual Research Report
伊波普猷の「沖縄学」の可能性――近代日本のナショナリズムを攪乱する思想
Project/Area Number |
22520087
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
三笘 利幸 九州国際大学, 経済学部, 准教授 (60412615)
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Keywords | 沖縄 / 日琉同祖論 / 包摂/排除 / 帝国主義 |
Research Abstract |
本研究は、伊波普猷の日琉同祖論に注目しながら、彼の展開した「沖縄学」が近代日本のナショナリズムを攪乱する思想であることをあきらかにして、新たな伊波普猷像を提示しようとするものである。既存の研究では、伊波の日琉同祖論は、同化主義や、同化と自立を揺れる意識のあらわれと評価された。しかし、本研究では、伊波の日琉同祖論の、日本と沖縄を「同祖」であるとしつつ沖縄の「異族」性を強調する矛盾したあり方に注目し、それが日本や沖縄というナショナルな単位の思考自体に疑義を提示するものであることをあきらかにし、近代日本のナショナリズムを内側から割り崩す可能性を持つ思想であったことを示したい。 本年度は、昨年度に引き続き、伊波の日琉同祖論という思想の形成、発展、変化を精緻に追う作業を行い、また、伊波に影響を上田萬年や金澤庄三郎あるいは鳥居龍蔵などの思想との関連を探った。伊波の師である上田萬年は日本の国語政策の中枢にいた人物であり、その影響がたとえば「P音考」などの論考に見られる。また、伊波が日琉同祖論を述べるとき、上田に見られるような言語だけではなく、鳥居龍蔵や金澤庄三郎らの人類学的な説も援用している。こうした伊波を取り巻く言説をまずはその原テキストにあたりながら影響関係を探った。便宜的に彼が活動を始める1900年から、離郷し東京に移り住む1925年を第1期、その後1947年に没するまでを第2期とし、本年度は第1期でも1910年以降を主たる対象とした。なおその内容については、2012年度以降に発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の発生により、震災と沖縄とを考えるという喫緊の課題にも取り組まざるを得なかったため、本研究の成果発表は本年度中に行えなかったが、作業自体は当初の予定にそうかたちで進めている。むしろ、当初よりもさらに深く調査し考察する必要も感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでどおり、研究実施計画にあわせて研究を行う。
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Research Products
(2 results)