2011 Fiscal Year Annual Research Report
宗教実践におけるイメージの機能-「霊性(スピリチュアリティ)の図像学」の展開-
Project/Area Number |
22520097
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
細田 あや子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00323949)
|
Keywords | 宗教美術 / ヴィジョン / 神秘主義 / 図像学 / メディア |
Research Abstract |
ヨーロッパ中世の神秘主義思想における幻視(ヴィジョン―神からの啓示)の視覚化の理解のために、神秘主義者といわれる人物たちの著作を引き続き精読し、具体的な作例、事例をもとにメディアとしてのヴィジョンとその視覚化のメカニズムについて考察した。ヴィジョンをメディアとしてとらえると、それは神や超越者と人間とのあいだをむすぶものといえる。すると、神、超越者と人間とのあいだにコミュニケーションが成立する。その際の視覚、聴覚など身体に関連する感覚により、異次元的なもの、世俗を超越したものをとらえることができるといえるのである。 さらにそしてその視覚化されたものを、宗教的実践のなかにおいて考えると、教会壁画やステンドグラス、また記念像などの彫刻がどのように用いられるのかということが明確になる。具体的に「シュラインの聖母」という聖母子の記念像をもとに、それが人びとの信仰心の深化のためどのように利用されていたのかを考察し、さらにその教育機能も明らかにした(『宗教研究』369号、2011年)。また視覚イメージが見る者(とくに信者など)へ訴えかける作用については、画像を行為遂行的なイメージ(performative image)ととらえることからも説明できることが明らかとなった。パフォーマンス理論を用いて、典礼や個人的瞑想などでイメージが有する力や機能を解明し、霊性・霊的生活におけるイメージの意味が理解された。さらに受容美学理論も援用し、メディアとしてのイメージが及ぼす効果についても検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(理由)中世ヨーロッパの神秘主義者の著作を精読し、ヴィジョンの視覚化を考察する計画であったが、著作内容が難解で理解するのに、思った以上に時間がかかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
中世ヨーロッパの神秘主義者の著作の理解を踏まえたうえで、ヴィジョンの視覚化と、その図像内容を把握してゆく。とくに中世の霊性における視覚イメージの意義を解明し、「霊性(スピリチュアリティ)の図像学」が宗教美術研究アプローチのひとつの切り口として有益である可能性を提示する。これによりヒエロファニーとしての宗教美術という特質に加え、具体的に中世霊性の中で見出される異界とのコミュニケーションの手段としての機能などの特徴を、明確化してゆく
|