2012 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの生態・環境美学的自然美の研究ー日本を焦点としてー
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22520100
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
青木 孝夫 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40192455)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 自然美 / 朦朧 / 雰囲気 / 雨または気象の美学 / 比較美学 / 環境美学 / 身心美学 / 生態美学 |
Research Abstract |
具体的内容:雨や夜や寒冷の如き気象・天候・時刻の否定的条件をも風流とする自然美学を、朦朧・夜雨・浸透を軸に解明し、西欧的な自然美学の標準的パラダイムの変革を推進した。 ①朦朧たる花月を評価する自然美享受は、清明な状況での視覚的満喫と異なる。朦朧は、見えざる花月への憧憬の想像力と情緒の喚起の条件として問題となる。更に、視覚を疎外する天候・気象・時間の状況それ自体に魅力がある。夜雨・暗香疎影・晩鐘等が朦朧の代表的事例であり、広島芸術学会で「夜雨の美学」を発表した。②恒久的な山河・平地を核とする西欧的風景観と夜雨の如き移ろい易き陰的自然条件を享受の相関者とする瀟湘八景的景色観は異なる。夜雨・暮雪・寒冷といった自然状況に於ける美的体験では、実存的状況と連動し、五感を蔵する身心が大きな役割を果たすことを、中国の「建設的なポストモダニズムと生態美学」国際会議で発表・投稿した。③対象との透明な距離を前提に、形や均衡や色彩を認知する視覚の美学と、上記の美的体験は異なる。世界と自己の関係を融合・接触・包摂として感知する美的体験モデルは、文学的伝統と深く結びついて培われた浸透モデルであり、このモデルは視覚的体験にも及ぶ。その考察を、中国での第六回東方美学会で発表、投稿した。 意義:東アジアに顕著な朦朧また浸透の美学が、雰囲気の美学と共通する全身心的な実存の美学であり、また霊性への希求であることを、豊富な事例で考察し、昼・晴・明の条件下、形を焦点に視覚優位の自然美学を展開してきた西欧の伝統的美学の革新を進めた。 重要性:東アジアの広義の雨の美学は、美的経験の基準を対象の知的認知よりも主客の全身心的融合に置く。美を知性と関連させるよりも自然的霊性との和合と関連させる。東アジアの自然美学は、いわば「形なきものの形を見」ようとする点で、身心的実存を軸に霊的また生態的生命の連関へと開かれていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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