2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本に伝来する中国明代製の花鳥獣文様染織品の変遷と国際展開
Project/Area Number |
22520102
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
吉田 雅子 京都市立芸術大学, 美術学部, 准教授 (40405238)
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Keywords | 美術史 / 染織 / 工芸 / 中国 / シノワズリ |
Research Abstract |
22年度は、まず謙伝寺(鳥取)、臨済寺(静岡)、黒川古文化研究所(兵庫)、松坂屋(京都)で、中国で明~清に制作されて日本に舶載された花鳥獣刺繍の染織品を調査した。次に、ニューヨークのメトロポリタン美術館において、この種の花鳥獣刺繍と、関連作例を調査した。さらに、ネブラスカで開催されたTextile Society of America(アメリカ染織学会)に出席し、アメリカの研究者と情報交換を行った。帰国後調査品の技術的データと画像データを整理して、以下の論文を執筆した。 「譲伝寺と臨済寺に伝来する花鳥獣文様刺繍布-生産地、制作年代、記録、墨書、伝来の検討」 中国で明末清初に制作され、日本に舶載された花鳥獣刺繍2作品の位置づけを考察した。四方向きの構図をとる臨済寺の作例には、複数の墨書がある。1595年から1625年の間に臨済寺に納められた可能性があるが、墨書が当初のものではないため、この年号は参考程度に扱うことが望ましい。 天地のある構図をとる譲伝寺作品は、亀井慈矩が文禄の役で入手して寄進したという伝承がある。 表現形式、物性、残存記録を検討した結果、文禄の役の伝承は後世の意図的な書き換えの可能性が高いこと、慈矩が寄進に関与したことはほぼ確実であることが判明した。この作例は、海外にあるこの種の作品を考察する上で基準作となり得るもので、その推定寄進年は、天地がある構図のうち最も早く大変貴重であることが明らかになった。 なお、本年度は以下の論文をもう1本執筆して『人文学報』に投稿した。こちらは編集の関係で掲載が2012年になるため、本年度の実績には含まずに、来年度に含めることとする。 「日本に舶載された欧州輸出用の中国染織品-刺繍ビロード6作品の意匠と技法を中心に-」
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