2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゴシック黎明期北イタリアの修道会美術研究―エミリア地方を中心に
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22520106
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
児嶋 由枝 上智大学, 文学部, 准教授 (70349017)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ロマネスク彫刻 / アダムとエヴァ図像 / 北イタリア修道院 / シトー会 / ベネディクト会 / 告解の秘蹟 |
Research Abstract |
12世紀後半の北イタリアでは、ロンバルディア・ロマネスクが独自の様式・図像を展開していた。すでにこのゴシック黎明期の北イタリアにおける中世都市国家聖堂に関わる美術の展開については研究を進めてきた。しかし、この展開に重要な役割を担ったとされる北イタリアの修道会美術に関してはいまだ多くのことが詳らかでない。 こうした状況をふまえ、エミリア地方の三箇所の修道院に焦点をあてて、このゴシック黎明期の北イタリア美術の展開の具体的な状況について研究を行っている。特にゴシック様式の導入時期とアダムとエヴァ彫刻図像が研究の中心となっている。 本年度は昨年に引き続き、パルマ国立古文書館、ピアチェンツァ国立古文書館、ピアチェンツァ大聖堂参事会古文書館、サンタントニーノ聖堂参堂図書館(ピアチェンツァ)、ローディ大聖堂参事会古文書会での史料調査を実施し、これらの古文書館での作業を完了した。 特に重要な実績は、ピアチェンツァ大聖堂参事図書館における、12世紀後半の典礼書調査である(codex n.4)。同文書は、これまで注目されることが無かったが、北イタリアのアダムとエヴァ図像を考察する上で、極めて重要であることが判明したのである。公開悔悛(penitenza pubblica)の具体的な手続きが詳細に記載されているのである。1215年の第4ラテラノ公会議以前の北イタリアにおける悔悛・告解の秘蹟の状況が、このように明らかとなったのは初めてである。 2012年度は、これをふまえてシチリアおよびナポリといった、南イタリアに残る12~13世紀の典礼書の調査を実施し、北イタリアの典礼の特徴を浮かび上がらせることができた。これをふまえ、ロマネスクの扉口図像と告解の秘蹟との関係についてより詳細に分析することが可能となったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北イタリア各地の古文書館および図書館において必要な史料・資料を調査できたのみならず、これと関係して南イタリアの古文書館での調査を実施することができた。 北イタリア・ロマネスクのアダムとエヴァ図像との関係で、ピアチェンツァ大聖堂参事図書館において12世紀の典礼書の内容を詳細に調査できたことは特に大きな成果といえる。典礼書に記載された公開悔悛の手続きの内容は、今後の研究の展開にとって極めて重要と考えられる。 また、この典礼書とアダムとエヴァ図像との関係について、イタリアおよびアメリカの研究者達と意見交換した意義を大きい。これをふまえて、近いうちに英文で、アメリカの学術雑誌に論文を投稿するはこびとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
各修道院および古文書館でのこれまでの現地調査結果の整理、分析を進める。 同時に、現地撮影した画像資料を図像および建築部位ごとに整理する。これらは外付けハードディスクに保存する計画である。 従来、パルマおよびピアチェンツァ周辺の修道院および古文書館での調査が中心であったが、今年度ローマのバチカン図書館、フィレンツェのイタリア国立中央図書館、そしてパリの国立図書館など中央の図書館においてこれまでの調査結果に関係する資料を蒐集する必要がある。特に1215年のラテラノ公会議での秘蹟に関する決定に関しては、ローマのバチカン図書館での調査が主眼となる。 また、今後は調査結果をまとめ、論文および学会発表などを通じて成果を発表していく。英語で論文を投稿する他、2013年10月にザグレブ(クロアチア)で開催される国際西洋中世美術史学会において口頭発表をおこなう予定である。
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Research Products
(2 results)