2010 Fiscal Year Annual Research Report
古代末期の信仰集団をめぐる美術研究-オスティア・アンティカ遺跡を中心に
Project/Area Number |
22520112
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
加藤 磨珠枝 立教大学, 文学部, 准教授 (40422521)
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Keywords | 美術史 / 考古学 / 宗教史 |
Research Abstract |
本研究では、オスティア・アンティカ遺跡に残る初期キリスト教時代の遺稿を中心に、都市に共存していたユダヤ教、ローマ伝統宗教、ミトラ教など、その他の信仰集団の美術も視野に含めることで、当時のローマ都市における宗教美術のあり方を探ることを目的とする。 本年度は、当初の予定通り、古代後期の考古学的発見が近年多くの報告されているイスラエルの現地調査を8月に敢行した。オスティアにはヨーロッパ地域で唯一といわれる古代シナゴーグの遺稿(1世紀)が残るが、イスラエルでは古代シナゴーグ遺跡(カファルナウム、セフォリス、ハマット・ティベリアス、ベト・アルファ他)を実見し、比較作例の都市計画における配置、室内装飾(特に床モザイク)の特徴について調査を行った。9月には、研究対象であるオスティア遺跡の他、周辺の共同墓地イゾラ・サクラ、ローマの現地調査を行い、各宗教施設の浮彫装飾、床モザイクなど、細部の検討を行った。と同時に、文献調査については、ローマにある研究所(Deutsches archaologisches Institut,British School)を主に利用し、帰国後は、入手した画像資料の整理およびベータベース化をはかり、調査結果の分析を行っている。 また、11月に日本で開催されたオスティア・アンティカ遺跡の関連シンポジウム「古代ローマ遺跡の保存と調査研究の現在」に協力し、来日したオスティア遺跡管轄の考古学者アンジェロ・ペレグリーニ、マルコ・サンジョルジョら、各国の研究者と意見交換を行い、最新の研究成果について知見を深めた。 今年度全体の研究成果を振り返ると、現地資料の入手についてはイスラエル地域のものも含め、出版物では確認できなかった細部画像の入手など、大きな成果を得ることができた。来年度の課題として、多岐にわたる調査データと関連文献をいかに有機的に結びつけ、自らの研究テーマを実証的に検証していくか、具体的手法をさらに模索する必要がある。
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Research Products
(5 results)