2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代末期の信仰集団をめぐる美術研究―オスティア・アンティカ遺跡を中心に
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22520112
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
加藤 磨珠枝 立教大学, 文学部, 准教授 (40422521)
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Keywords | 美術史 / 考古学 / 古代史 / 宗教史 / イタリア |
Research Abstract |
本研究は、ローマの外港オスティア・アンティカ遺跡に残る古代末期の宗教的遺構を対象とし、都市内に共存していたローマ伝統宗教、キリスト教、ミトラ教、ユダヤ教など、多様な信仰集団の美術について考察する。これによって当時の宗教美術のあり方を多角的に探ることを目的とする。 本年度はまず、これまでに入手した画像資料の整理を体系的に行った。オスティアには、各区域に点在する形で聖域の内部装飾が確認されているが、各モニュメントの詳細な現存状態を記録する画像データは本研究の基礎となる。加えて、8月には計画に従い、アメリカの美術館(ニューヨークのメトロポリタン美術館、ユダヤ博物館、ロサンゼルスのゲッティ美術館等)に所蔵されているオスティア遺跡の出土品および同時代の関連作品の現地調査を行った。とりわけ、メトロポリタン美術館では学芸員の協力により、修復中で展示されていない作品も実見する機会に恵まれ、帰国後は入手した資料の整理およびデータベース化をはかり、調査結果の分析を行っている。また、10月に京都の立命館大学で開催された「国際シンポジウム:21世紀の風景表象-風景の構築と自然の認識」にて発表を行い、古代都市における風景の構築について、自然環境と聖地をめぐる有機的関係を論じた。これはオスティアにおける初期キリスト教会堂の地誌的特徴などを考える上で重要な機会となった。 本年度は当初の「研究実施計画」に基づき研究活動を行い、入手した調査データと関連文献の分析にも一定の成果をあげることができた。しかし内容に磨きをかけ論文という形で発表するまでにはいたらなかった点が残念であり、これを新年度の最重要課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オスティア・アンティカ遺跡に点在する4~9世紀の宗教施設の空間と内部装飾の全体像をまとめ、また関連する先行研究の文献収集と読解を行い、問題の所在を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針について基本的変更はないが、オスティア遺跡の研究を進めれば進めるほど、都市ローマとの密接な関係を強く意識するようになってきた。そのため、今後は同時代の都市ローマの聖堂内装飾との比較をさらに厳密に進め、同時に当時のオスティアの宗教美術におけるヘレニズム化の実態、その特色を広く美術史的文脈で捉えなおす。
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