2010 Fiscal Year Annual Research Report
京焼の技術系譜をめぐる関西陶磁の成立と展開に関する美術工芸史・考古学の総合的研究
Project/Area Number |
22520119
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
佐藤 隆 財団法人大阪市博物館協会, 大阪文化財研究所, 長原調査事務所長 (50344362)
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Keywords | 京焼 / 野々村仁清 / 技術系譜 / 連房式登窯 / 考古学 / 美術工芸史 |
Research Abstract |
本年度の主要な研究成果は、尾野善裕(連携研究者)と行なった京都国立博物館が所蔵する御室仁清窯跡採集資料(京博陶片)の整理・検討、および尾野・畑中英二(研究協力者)とともに行なった関連資料の調査によるものである。京博陶片は、実測済みの130点について写真撮影および観察表の作成を行なった。その結果、技法においては左回転水挽きの茶入が唐物を意識して製作された可能性のあることがわかり、印銘においては数種ある印を分類して把握する手がかりが得られた。そうした問題意識から、12月と翌年1月には東京国立博物館・根津美術館の所蔵する御室窯跡の採集陶片資料を、2月には東京大学埋蔵文化財調査室で同大学構内遺跡の出土資料を調査した。東京国立博物館の陶片資料(東博陶片)は合計207点を調査し、技法・印銘に関して京博陶片とは異なった特徴をもつものが多いことがわかった。高麗茶碗写しの製品が多いことは共通するが、釉調や目跡の付け方が京博陶片にはあまり見られない特徴のものが目立つ。京博陶片では圧倒的に多い繭型印が少なく、逆に少数派であった小判型印が多数を占めている。こうした特徴の差違は、両陶片の採集地点の違いを反映している可能性があり、当時のことを知る研究者からの聞き取り調査も行なった。また、数茶入を中心に伝世資料の調査を、12月には根津美術館、1月には泉屋博古館分館、2月には静嘉堂文庫美術館で行なった。採集陶片では見られなかった仁清印のある左回転水挽きの茶入をわずかながら確認できた。 以上に加えて、11月には佐賀県立九州陶磁文化館(九州各地産陶磁器)、12月には三井記念美術館(室町三井家旧蔵茶道具)・出光美術館(南宋~明時代末期頃の中国福建省産陶磁器)において展示資料の熟覧と情報収集を行なった。いずれも国産・中国産の茶入を中心に観察した。また、現地調査の準備状況については、候補地を絞り込むための情報収集を行なった。
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Research Products
(1 results)