2013 Fiscal Year Annual Research Report
純粋音楽の思想 ―音楽美学者としてのヨーゼフ・マティーアス・ハウアー研究―
Project/Area Number |
22520121
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木村 直弘 岩手大学, 教育学部, 教授 (40221923)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ハウアー / 雑音音楽 |
Research Abstract |
最終年度である平成25年度は、他の芸術諸分野や思想分野とハウアーの「純粋音楽」思想との関連と、後世への影響について考察した。まず、イタリア未来派に代表されるように、第一次世界大戦前後は,芸術分野で,雑音あるいは騒音がクローズアップされた時代であったことに注目し、従来見過ごされてきたハウアーの雑音音楽観について,当時の時代背景と関連させながら明らかにした。ハウアーにとっては、未来派的な即物的雑音や表現主義的な雑音的効果は極めて「感覚的」なものであって、排除されるべきものとみなされる。それは楽音でも同じであり、たとえば、長7度の導音進行(=解決)のように「自然な」「感覚的」「機械的」聴習慣は否定される。ハウアーが要請するのは、絶対音高に左右されない純粋な「音程」関係であり(そこにはもはや協和・不協和の区別はない)、その聴取には,いわば精神的「緊張」が要請される。このように、雑音的なものの聴取に精神性を要請する姿勢は、同時代オーストリアの詩人リルケにも共通していた。 たとえばシェーンベルクは無調による表現主義的作曲から十二音技法へと移行してゆくが、どのような作曲技法に依拠しようとシェーンベルクの関心は音楽による「表現」にあった。それに対して、ハウアーの(十二音技法による)「無調」の旋律は、作曲された音楽それ自体であることよりも、いかにその創出にあたって合法即的な「音楽的直観」、すなわち「精神」性を確保できるかという精神的営為とそのプロセスの方が重要視される。それゆえハウアーは自分の音楽を実用に供するのを拒んだ理由であった。第二次世界大戦後、ジョン・ケージの《四分三十三秒》に代表されるような、まさにハウアーの「無調」=「純粋」音楽は、「表現」を否定したコンセプトとしての音楽、あるいは前述のような音程関係のパラメータ的「自立」はセリー音楽の先駆けといって過言ではない。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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