2011 Fiscal Year Annual Research Report
大正・昭和の演劇運動が韓国の近現代劇成立に与えた影響に関する研究
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22520122
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 鉉哲 東北大学, 高等教育開発推進センター, 講師 (80361210)
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Keywords | 小劇場運動 / 大衆劇 / 翻訳劇 / 伝統劇 / 新劇 / 劇芸術研究会 / 海外文学派 / 民族劇 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大正・昭和の演劇界で形成された新しい劇理論が韓国の近代・現代劇成立にいかなる影響を及ぼしたかを明らかにすることである。平成23年度の研究は演劇論争史の中でも激しい論争になった「小劇場運動と大衆劇」、「翻訳劇の問題」、「伝統劇の価値」の問題を中心に行った。 本年度には、日韓の影響関係を客観的に立証できる公演資料と新聞記事を中心に、資料収集と分析作業を行った。その結果、韓国の新派劇と新劇は公演レパートリーを見ると日本を模倣する方式で始まったことが明らかになった。しかし、このような傾向は1930年代から大きく変化し始めた。韓国国内でも「小劇場運動」の限界について認識するようになったことがそのきっかけであった。この小劇場と翻訳劇に関する論争は劇芸術研究会においても大きな問題であった。結局、1935年頃からは劇芸術研究会でも創作劇を中心にレパートリーを変えようとする動きが起き始めた。このような変化の最も大きい理由は観客が翻訳劇を正しく理解できなくなったということであった。柳致真を中心に変化が始まったが、この変化は劇芸術研究会の大多数を占めていた「海外文学派」の暗黙的な同意を得たので可能だった。 「伝統劇の価値」に関する認識も日本新劇においての浄瑠璃と歌舞伎の関心と似ていた。しかし、実際には大きな差があった。日本では浄瑠璃と歌舞伎の様式美に注目したとすれば、韓国では原形的な形式と内容を包括的に注目した。このような認識のために劇形式という具体性は欠如し、理想的な民族劇を作らなければならないという正当性だけが強調された。結局、実体は曖昧になり、難解な虚像だけの論争にとどまったという限界があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進展しているが、公演資料の収集が少し難しい。特に、日韓の影響関係と関連した1920-30年度の舞台公演資料が少ないのが一番大きいな難点である。
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Strategy for Future Research Activity |
1920-30年代の舞台公演資料を収集するために、韓国地方にある資料館、記念館、図書館などを直接訪問し、関係資料を収集する計画である。
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