2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520126
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 義孝 筑波大学, 芸術系, 教授 (10198252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 甲 千葉大学, 教育学部, 教授 (60272291)
松尾 大介 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (50377230)
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Keywords | 蝋型鋳造 / 彫刻表現 / ブロンズ / 鋳造技法 |
Research Abstract |
本研究は蝋型美術鋳造の技法研究を基に、鋳造による彫刻表現の可能性を追求していくものである。平成23年度は、昨年に引き続き中村義孝、宮崎甲によって、イタリアのローマ、ベローナ、フィレンツェ、ピエトラサンタ、チェルタルドの各市における鋳造所において実際に行われている鋳造法について調査をし、蝋およびブロンズ、鋳型材料の成分、鋳込み法、仕上げ法、等の調査を行った。研究代表者である中村義孝は7月に約2週間ローマのカバラーリ鋳造所とベローナのファブリス・フォーラス鋳造所に自作の雌型を持ち込み蝋原形の制作を行った。その間、蝋張、湯道取り付け、鋳造、仕上げなどの現場に立ち会い、意見交換、資料収集をおこなった。その後、「蝋型鋳造による新しい彫刻表現」の取り組みとして、石膏原形から雌型を取り、その雌型から蝋原形を部分的に複数得て、それを蝋直付けにより再構成する表現方法を試みた。また中子を芯にし、その上に直接蝋でモデリングしていく方法も行い、蝋直付けに適した蝋の配合についても検証した。研究分担者宮崎甲は平成23年度4月から9月までの間、イタリアのチェルタルド市に滞在し、ピエトラサンタのベルシリエセ鋳造所の視察や、フィレンツェ、ピサ等のブロンズ作品の技法の検証を行いながら、蝋直造り法を中心にした原型によってブロンズ作品の制作を行った。制作工程にはシリコンゴム型、石膏型、葦やバルサなどを意識的に混合させ、原型作りの新しい造形表現の可能性を探った。滞在中、主に蝋原型造り・鋳型作りおよび仕上げはジェッリ鋳造所(チェルタルド市)において実践した。期間中、ブロンズ小品34点を制作し、7月30日から8月16日の間、チェルタルド市において同市後援の展覧会により成果を発表した。研究分担者松尾大介はブロンズと石や鉄等の異素材とを鋳造後に組み合わせる従来の方法ではなく、蝋原形の制作、鋳込み等、イタリア式蝋型鋳造固有のプロセスを経ることで得られる異素材結合方法を考察し、今後の研究に展開できる作例を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りにイタリアの鋳造所(ローマ、ベローナ、ピエトラサンタ、フィレンツェ、チェルタルド)において自作を持ち込んでそれを鋳造することで実際の技法と材料についての資料の収集がされつつあり、現代におけるイタリアの蝋型鋳造技法の一部が明らかになった。またこれらの取材を踏まえ制作者の立場から、イタリア式蝋型鋳造彫刻の特質を生かした表現についても、平成23年度から着手し始め、成果を展覧会等で発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度、平成25年においては、分担者がそれぞれ設定した課題に基づき、イタリア式蝋型鋳造の表現の可能性について、実制作を通して検証していくこととなる。この期間、本研究の分担者とその周辺の研究者をまじえて研究会を開催することを予定している。最終年度(平成26年度)には研究成果として生み出された作品の一般公開を美術館等で行うことを計画している。また作品の一般公開時に併せて研究の成果を発表する機会を設け資料として印刷物の作成・配付も考えている。
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