2010 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的群衆演出の成立 ドイツ・ワイマール期の表象芸術
Project/Area Number |
22520141
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
山本 順子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (80295576)
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Keywords | アウラ概念 / 崇高美学 / hic et nunc / 群衆論 / フランス革命 / ベンヤミン |
Research Abstract |
当該年度の研究計画は、以下の通りである。1.群衆論の概観を得る。特権階級崩壊後の近代の現象として歴史的、社会的記述を検証すること。2.ドイツ語圏の思想家による考察を参考にプロパガンダの対象となった20世紀の大衆社会を分析すること。以上を踏まえた上で「崇高概念」を中心概念に起き、群衆現象をその形式と捉え、変遷をたどった成果が論文「複製技術時代の崇高-集団身体のアウラ的現前に抗して」である。崇高概念を導入したのは、そのことによって市民の蝟集現象に新たな価値を与え、感覚変容の視点を導入できるからである。 近代において崇高概念を捉えるに際し、主体を越える対象に対する戦慄や畏怖感情として理論化したのがエドマンド・バークであるが、彼のフランス革命の観察にも同様の構造がみられ、革命群衆の熱狂やそれがもたらした荒廃の有様を特筆すべき出来事と注目している。バークのこの二点を出発点に、群衆論の端緒を開いたギュスターヴ・ル・ボンによるフランス革命にも、また、ヘーゲルによる歴史精神の構想にも、この新時代の勢力がいかに世界を動かしたかが語られている。 マルクスが1789年の仏大革命の反復であると19世紀の諸革命を批判し、hic et nuncを掲げたことは、この崇高観に新たな価値を与える。それは表象批判であり、仮象の連鎖に「中断」を求めることに階級闘争を挑む。それは、ベンヤミンの複製技術論のアウラ崩壊の指摘とともに、集団鑑賞の形式を批判の形式にみる社会認識につながるのだ。 集団の形式が表象の「いま・ここ」をもたらすと同時に、それが新しいアウラの創設に繋がる契機を含みファシズムに取り込まれる危険性も持ち合わせることを分析した。
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Research Products
(1 results)