2011 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア地方分権下のバリにおける文化復興運動と文化政策にみる芸能の変容
Project/Area Number |
22520145
|
Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
梅田 英春 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (40316203)
|
Keywords | バリ / 文化政策 / 地方分権 / 芸能 / カランガッスム県 / プンティン |
Research Abstract |
本研究は中央集権的なスハルト政権崩壊後、2000年に始まった地方分権法の施行によって、バリ州民の意識が変わった結果、2000年からバリ全土で沸き起こった文化復興運動と、1950年代後半から約50年もの間続いた、国民文化論のもとで実施されてきた国家主義的な文化政策の方針転換により、各地方で沸き起こっているアイデンティティの再認識の結果、急激に変化するバリ芸能に焦点を当てている。 平成23年度は、特にバリ島東部カランガッスム県が数年前から取り組んでいる独自の芸術文化政策に焦点を当てて調査を行った。特にカランガッスム県の代表的な芸能として、ここ数年、地方アイデンティティと結びつけようと県が支援を行っている県庁所在地アムラプラで活動するプンティンとよばれるガムラン編成を中心に調査を行った。6月末には、カランガッスム県代表としてバリ州主催の芸術祭に出演したときの記録や上演の背景などの調査、8月は文化局への調査を繰り返し行った。 これらの調査は、本研究にとって大きな意義がある。それまで州政府(州の文化局)が規定した枠組みの中で伝統芸能の継承や育成が行われてきたが、ここにきて、地方独自のほとんどマイナーな芸能を各地方の文化局は自分たちの地域の芸能として、突然、注目しはじめたからである。これは、まさに「バリ」という枠組みの中で行われてきた文化政策を「地方=県」という枠組みでとらえなおそうとしている大きな変化の現れだからである。 またこうした地方の芸能は、数百年前から存在していたいわゆる伝統音楽ではなく、1920年代から30年代に新しく伝播した「大正琴」を変容させて用いる「作られた伝統」であることが重要である。その歴史的正当性よりもむしろ、他県には見られない「新しさ」に文化的アイデンティティを付与しようとする芸術文化政策は、急激に変化しつつあるバリの文化の今を知るうえで重要な現象といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な文化復興、芸術文化政策に着目し、すでに複数回の調査を行っているため、おおむね順調に研究は進行しているといえる。平成22年度、平成23年度とも調査内容は、学会で報告するとともに、論文として刊行も行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、今年度は短期的な調査をバリ州で実施することに加え、研究会、学会等での調査報告、調査報告の執筆を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)