2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520167
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Research Institution | Asian Cultural Exchange Center |
Principal Investigator |
楠井 隆志 福岡県立アジア文化交流センター, 展示課, 研究員 (30446885)
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Keywords | X線CT / 三次元画像 / 像内納入品 / 五臓六腑 / 黄檗 / 范道生 / 萬福寺 / 聖福寺 |
Research Abstract |
平成23年度は、特別展「黄檗-OBAKU 京都宇治・萬福寺の名宝と禅の新風」に出陳した主要彫像を中心にX線CT調査やX線透過撮影を重点的に実施した。比較的小型の彫像についてはX線CT調査を実施し、像内納入の存在確認、内部構造の解析をおこなった。大型の彫像についてはX線透過撮影を実施した。これにより、17世紀の活発な日中貿易の過程で日本に舶載された中国木彫仏、また長崎で中国人渡来仏師が制作した木彫仏などのデータがかなり蓄積された。 会期終了後館内で実施した長崎市・聖福寺の釈迦如来坐像(1698年請来)の調査では、X線透過撮影により像内に納入品が存在することを確認、さらにCTによって納入品の三次元画像を採取した結果、金属製五臓が検出された。国内外で5例目の発見例となり、未解体での発見は初の事例となった。その後、未出陳であった両脇侍像(迦葉尊者立像および阿難尊者立像)、白衣観音坐像について現地でのX線透過撮影を実施したところ、予想通り、両脇侍の像内にも釈迦如来像とまったく同工の金属製五臓が、白衣観音坐像からは別工の金属製五臓が検出された。これらの調査成果は積極的にマスコミに提供し、大きく報道された。さらに三次元データを元に実寸大石膏模型を三次元プリンタで製作、講演会での紹介、聖福寺での公開に役立てた。平成24年5月9日から7月1日まで開催する特集展示「日本医術のことはじめ -まじないから解体新書まで-」において、X線透過写真とともにこの模型を展示し、中国彫像特有の像内納入五臓六腑模型として紹介した。 長崎市・興福寺の媽祖倚像および侍女立像の調査成果は、九州国立博物館紀要『東風西声』に基礎資料を掲載した。 そのほか九州所在作品ではないが、京都府宇治市・黄檗山万福寺所蔵で中国人渡来仏師・范道生の作品である木造隠元隆〓倚像(1663年)や脱活乾漆造白衣観音坐像(1662年)など、寺外初公開作品の基礎データを蓄積することが出来た。X線調査の実施により、内部構造についてある程度把握することができた。范道生作品の評価は、江戸時代彫刻史の再評価に結び付くものと期待される。今後も黄檗宗関係彫像の作品研究は継続的に進めて参りたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで調査研究が進んでいなかった黄檗宗関係の彫像を重点的に調査対象とした結果、17世紀制作の中国明末清初系彫像13躯(X線CT調査7躯、X線透過撮影8躯)の内部構造を解明することができたこと、うち像内に五臓六腑を納入する作例を4件確認したことなど、予想以上の大きな調査成果をあげることが出来た。また、その成果を積極的にマスコミに公表したり、三次元プリンタによる実寸大模型を製作して所蔵者に寄贈、地元関係者の理解に役立てるなど、広く一般に公開するとともに地元に研究成果を還元した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は最終年度となるが、3カ年で実施した解析や画像の整理を進めるとともに、調査成果の公開を目的に論文掲載2件を目標としたい。また、長崎唐寺所蔵の17世紀明末清初期彫像の調査はこれまでの日本彫刻史研究において看過してきた分野でもある。引き続き、継続的に調査が実施できるよう計画的に取り組んでいく。
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