2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世近代を通貫する十九世紀小説史の構築へ向けた<絵入小説>の書誌学的研究
Project/Area Number |
22520169
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高木 元 千葉大学, 文学部, 教授 (00226747)
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Keywords | 十九世紀文学 / 絵入小説 / 草双紙 / 文学史 / 出版史 |
Research Abstract |
新たな研究計画の初年度として今までに蒐集した読本を主とする絵入本の画像データと書誌データとのデータベース化から着手した。デジカメ使用が可能になったことで書誌調査の効率は飛躍的に高くなったが、調査から戻った後でのデータ整理が追いつかないのが実情である。 明治期草双紙に関する調査も、既に蒐集してある画像データに基づくデータベース化を進めた。折から佐藤悟氏に拠る労作『正本写合巻年表(正本写合巻集・別冊)』(国立劇場調査養成部)が出た。歌舞伎の草双紙化に関する文学史についての劃期的な成果であり本研究計画でも大いに参考にしたい。 また、偶然ではあるがギメ東洋美術館の図書室に後期読本の挿絵だけを集めて綴じ直した本が大量に蔵されていることが分かり、急遽パリに出向いて全部を調査させて頂いた。細かい分析を待たなければ精確なことはいえないが、明治二十年代、貸本屋が活版本の出版に押されて廃業しつつあった時期、欧州でのジャポニズム隆盛を見た古本業者が斯様に改竄改装した<商品>を欧州にもたらしたものと推測しうる。これからデータを分析して<絵入小説>の末路としての位置付けについて考察を深めていきたい。
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