2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520170
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 一臣 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50092268)
|
Keywords | 『万葉集』 / 語彙 / 表現論 |
Research Abstract |
本研究は、『万葉集』の昨年完結した注釈作業を受け継ぎ、その補充をはかるとともに、新たな『万葉集辞典』完成させるための基礎作業を行うところに目的をもつ。その目的を達成するために、昨年度は、私の『万葉集』の注釈「万葉集全解」の本文の電子データ化の作業を進めた。半分は来年度の研究に委ねることになるが、目下のところそのデータを整理し、表現の類型を見定めた上で、枕詞・序詞などの喩的な表場について、言葉と言葉の接続のありようを詳細に検討し、『万葉集辞典』の基礎語彙を選び出す作業を行った。また、この基礎語彙を徹底的に検討するための「万葉語詞研究会」を組織し、志を同じくする研究者数名と、数度にわたる研究会を開催した。その成果は、最終年度に『万葉語詞』と題して公刊を予定している。一方、今年度の成果をもとに、海外も含めていくつかの口頭発表を行った。ここには古事記学会での招待公演「古代の「音」と「言」」のみを発表例として示したが、これは古代の言語表現を分析する中で、「音」と「言」が、それぞれに非秩序と秩序の意味合いをもつことを論じたものである。他にも、中国東北大学(瀋陽)、イタリアビコッカ大学(ミラノ)において、『万葉集』の表現がもつ言葉の呪力のありようについて、招待公演をおこなった。論文としては、「〈采女〉の背景」「アマテラスの影」を発表したが、本研究の成果が部分的に取り入れられている。ここに記した以外にも、短歌誌『礫』において「柿本人麻呂」についての長篇論考を連載注であり、人麻呂の表現分析に際して、本研究の成果が縦横に利用されている。なお、『万葉集』の注釈の補充として、風土的調査を実施して、有益な知見を得た。
|