2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520176
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渡辺 秀夫 信州大学, 人文学部, 教授 (90123083)
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Keywords | 勅撰和歌集 / 和漢比較文学 / 礼楽思想 |
Research Abstract |
古典研究にあって、ブッキッシュな出典論・材原論では届かない手法的限界に、どのように向き合うのか。勅撰和歌集の序文の解読に際し、古代礼楽思想-先秦から宋学を経て知の基盤を成す儒教的人間観(性情論・世界観)の体系的な理解-が、研究上いかに必要不可欠な前提であるか、についての考察を進め、「詩歌の発生論と<型>-「古今集序」の理解をめぐって-」(古代文学会 連続シンポジウム<型>のダイナミズム-古代文学の普遍と固有-)、「古典解釈における『近代』と『前近代』」(西田幾多郎生誕140周年記念国際シンポジウム日本文化-その価値観の多様性-)等の国内外の招待シンポジウムでの発表・討論及びこれに付随する文献調査・資料収集を行った。これらを通じ、(1)現在大きな疑念も抱かれず一般化された近代以降の通説の一例を批判的にとりあげ、中・近世の古注釈類の解釈例をも参照しながら、前近代の"儒教的な思想的枠組み"を復元的に共有することによって、それらをベースとして成り立っ古代の言説の同時代的な("本来の""あるべき")解釈を呈示し、一定の成果を収めるとともに、(2)従来の和漢比較研究における出典・材原論の限界性(なぜ、その時期にそのようなものをこのように意味づけ体系化したかという本質的な解答に迫り得ない)を打破するためには、当代文化の考え方の枠組み-礼楽を基本とする儒学的世界観の通時、共時的な思考体系(個々の材料を統括し意味づける大きなロゴス)を理解することが、古典注釈に不可欠であること等、次年度以降に向けた各勅撰和歌集序の注釈的研究手法上の有益な指針を得ることができた。
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