2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520177
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
榊原 千鶴 名古屋大学, 男女共同参画室, 准教授 (50313979)
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Keywords | <知>の継承 / 女訓 / 女子用書簡文範 / 道歌 / 侍講 / 中世軍記物語 / 『月庵酔醒記』 |
Research Abstract |
本研究は、女性教育を<知>の継承という観点から捉え、社会文化史、政治思想史における「女訓」という歴史的視座の有効性を考えるとともに、明治期に行われた「女性教育の内実」と「教育という営為」を、天皇・皇后側近、政府首脳、民間三者のありかたと、彼らが編纂した教材、読み物、表象により明らかにすることをめざす。 2年目にあたる平成23年度は、韻文および書簡文範による教育という面から、明治期女性教育の特徴と、主として中世期からの<知>の継承について考察し、その成果を以下2篇にまとめ、公表した。 1女子用書簡文範の鼇頭と軍記物語-『通俗書簡文』を手がかりとして- 明治期に多く作られた女性向け書簡文範のひとつで、樋口一葉晩年の作として広く読まれた『通俗書簡文』を取りあげ、一葉による本文と、それとは別に設けられた鼇頭とにより創造された書簡文範という世界と、そこに引かれた中世軍記物語の存在および果たした役割から、近代における中世文学再生の意味を、戦時下の女性像という観点から論じた。 2道歌の効用-『月庵酔醒記』と福羽美静にみる明治期女性教育 明治天皇の侍講で、美子皇后にも近く仕えた福羽美静による女性向け韻文教育について考察した。具体的には、中世末から近世期にかけて多く作られたいろは歌をはじめとする道歌の世界と、その教訓性を受け継ぐかたちで福羽が実践した、韻文の反復愛唱による女性教育の事例を紹介し、その有効性を論じた。 また、平成22年度「文部科学教育通信」連載「<知>の継承から考える明治期の女性教育-先駆者の気概に学ぶ-」をもととした一般向け書籍の出版を企画した。(最終年度内に出版の予定)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度は、韻文および書簡文範を取りあげることで、明治期女性教育の特徴とその内実を、資料により具体的に指摘するとともに、<知>の継承という面では中世期との密接な関連を指摘、論文化した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果をもとに、主として一般を対象とした明治期女性教育に関する書籍を刊行することとなった。 (発刊は最終年度、出版社は三弥井書店の予定)。そのため、当初予定していた資料調査とそのデータベース化については、書籍執筆に関わる資料を中心とすることとした。
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Research Products
(2 results)