2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520178
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 亨 名古屋大学, 文学研究科, 名誉教授 (10093048)
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Keywords | 源 / 源氏絵 / 詞書筆者 / 狩野派 / 土佐派 |
Research Abstract |
江戸時代の前期の源氏絵を中心とした物語絵の詞書筆者について、具体的な作例に基づいて検討し、その文化史における背景を探った。江戸時代の前期には、絵と詞書を組み合わせた画帖を中心として、源氏絵をはじめとする物語絵、また歌仙絵などが多く作成され、その遺品も少なくない。本年度は昨年度に引き続き、海外における資料調査と国内における資料調査を進め、そのデータを集積して検討を進めた。具体的には、昨年度にウィーンの実用工芸博物館(MAK)で発見した詞書を伴う源氏画帖を中心にして、これまでの関連資料と比較検討する一覧資料を巻別に作成し、それが17世紀の中頃の住吉派に近い絵師により、詞書の筆者も不明ではあるが、近衛流の能筆の公家によると推定した。これについては、8月にエストニアのタリンで催されたヨーロッパ日本学会議における源氏物語のパネルで発表した。また、これを含む源氏物語と源氏文化の意義について、9月はじめにタリンにひき続いて訪れたサンクトペテルブルグ東洋大学においても講演した。この江戸前期における源氏絵と詞書の画像集成の一覧表、またすでに作成し増補を加えつつある源氏絵を中心とした詞書筆者一覧の図により、17世紀における天皇を頂点とした公家と、徳川将軍家を中心とした武家との相互補完の関係から形成された文化の特徴が具体的に解明されつつあるといってよい。源氏絵の詞書筆者である公家の多くは、三十六歌仙や百人一首の画帖などの詞書筆者でもあることが判明した。それらのコーディネーターとして、飛鳥井雅章なども浮上してきた。また、平成24年の3月には、ニューヨークのメトロポリタン美術館で催されている日本の物語絵についての特別展覧会を訪れて調査するとともに、そのワークショップに参加した。そこで、アメリカにおける物語絵の資料情報と、最新の研究情報を集積することもできた。さらに、架蔵の屏風などをきっかけとして、尾張徳川家蔵の清原雪信の絵に公家たちの寄合書の詞書を付した源氏画帖を中心として、清原雪信についての資料収集をし、その中間報告としての論文も発表することができた。これは、狩野派、土佐派、住吉派などの男性による専門絵師と能筆の公家の周辺にあって、平安朝の女性文化の視座からも注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予想外に内外の資料調査における新発見資料との出会いがあった。また、近年の平安文学研究と日本美術史研究の動向ともうまくかみあって、最新の研究情報を組み込むことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成24年度で、これまでの研究情報を整理して、とりあえずのまとめとする。すでに論文化している部分もあるが、より総合的な物語絵と詞書筆者たちの視座からの、武家と公家をめぐる文化史研究へとすすめたい。
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Research Products
(2 results)