2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520186
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西田 正宏 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (00305608)
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Keywords | 懐徳堂 / 学芸史 / 和学 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度引き続き五井蘭洲著の古今和歌集の注釈書『古今通』の翻刻を継続して行った。特に本年度は伝本によって大きく異なっている「仮名序」の部分を、伝本間の比較を行うとともに、他の注釈と比較し、その影響関係についても検討した。 また、大阪府立中之島図書館に蔵せられている同じ蘭洲著の『古今序紀聞』についても翻刻するとともに、『古今通』との比較研究を行った。作業が年度末までかかってしまったため、発表には至っていないが、来年度には公刊したい。 これらの作業を通して、ようやく『古今通』の『古今和歌集』注釈史上における位置づけが明らかになった。この点については、WEB上で公開予定の辞典の項目として簡略にまとめたが、研究論文としても発表することにしたい。 『伊勢物語』の注釈書である『勢語通』についても、その内容検討を進めてきたが、2011年11月に片桐洋一氏蔵本と大阪大学懐徳堂文庫所蔵本が田中まき氏によって翻刻、刊行され(和泉書院)、今後は、この成果を踏まえての考察が必要となった。 『詠歌大概』の蘭洲の注釈書である『詠歌大概紀聞』については、翻刻をはじめている。 『古今通』の検討を通して、改めて、当時の古今伝授の具体の様相が課題として浮かび上がってきた。その点については、さかのぼって古今伝授そのものの意義を問う論文(「切紙とは何か-古今伝授「三鳥」をめぐって」)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
扱っている資料は、活字化されていないので、まず基礎研究として、翻字、本文の制定、注釈の必要がある。交付申請書に記載した資料の翻字については、ほぼ順調に進んでいる。『勢語通』については、新たな資料の翻刻が出てしまったため、その点を考慮する必要が出てきたが、それ以外の資料については、内容の検討も予定通り進めつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、当初の予定通り、『古今通』の四伝本を対照した翻字を進めるとともに、『詠歌大概紀聞』など、蘭洲の注釈書を翻字する。新たな課題として、蘭洲の和学に直接影響を与えた父・持軒のことや、持軒と交流のあった下河辺長流についても検討する必要がある。この点については、持軒関係の資料を探索しなければならないだろう。
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