2010 Fiscal Year Annual Research Report
水戸藩と九州諸藩を中心とした近世前期における知識人の交流と出版文化の研究
Project/Area Number |
22520200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
倉員 正江 (長谷川 正江) 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70307817)
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Keywords | 水戸藩 / 柳河藩 / 薩摩藩 / 出版文化 |
Research Abstract |
水戸藩彰考館で編纂された書物の刊行をめぐる実態につき考察した。多くの場合初期には江戸の書肆富野松雲と京都の書肆茨城多左衛門から、富野廃業後は茨城から単独で出版された。その場合、京都の茨城が当初からの蔵版元であると従来漠然と考えられてきたが、実は富野が蔵版元であるケースがあったことが解明された。ただし、当時の技術的先進性から実際の印刷・製本は京都で担当していたため、板木は茨城が所有していたことも判明した。こうした経緯が版権問題を複雑にし、彰考館側と書肆側に認識の齟齬が生じたことで、蔵版目録の成立につながったと推察した。 近世成立の軍記は出版規制の対象となりやすいことは従来から指摘され、拙稿でも実例を論じてきたが、今回は『西国盛衰記』の板木修訂の実態から、島津歳久の自害記事を一旦は削除しながら復活させた事情につき考察した。結論として柳河藩からクレームのあった『九州記』絶版に鑑み、薩摩藩を憚った書肆側の自主規制によるものであろうと判断した。 今年は中華民国の台湾大学から「東亜文明の発展と朱舜水」国際シンポジウムに招聘され、パネリストとして発表する機会を得た。そこで水戸藩関係の記録類に見える舜水関係記事を紹介した。それに関連して、水戸藩において朱舜水が没後どのように祀られてきたか、祠堂と石碑の造営をめぐる具体的事情について『大日本史編纂記録(往復書案)』を中心に考察した。水戸藩は祭祀において舜水が遺した記録に基づき、幕末まで祠堂守がその任務に当ったことを考察した。
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Research Products
(4 results)