2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520208
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
辻本 裕成 南山大学, 人文学部, 准教授 (90249920)
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Keywords | 『河海抄』 / 抄物 / 中世 / 教養形成 / 有職故実 / 辞書 |
Research Abstract |
本年度は研究計画の一年目であったが、基礎資料の収集とデータ作成の準備に努め、来年度からの本格的な研究の基盤を整えることができた。本年度中には『河海抄』そのものについての論文を発表することはできなかったが、代表者が、分担者として参加している科研研究の成果と合わせて、中世の医事説話についての論文を発表することができ、中世の知的営為、学問読書のあり方について、一定の知見を加えることができた。以下、本年度の計画として提出した文書の順番に従って総括する。 1 「『河海抄』の記述内容に関するデータベースの作成」については『河海抄』の内容は質量ともに豊富で、予定のように進まなかった。ほかの有職故実書と記述を摺り合わせることで、十四世紀以降の人々にとって、王朝文化の総体がいかなる意味を持ったかを明らかにすることができるであろう。 2 「『河海抄』諸本の調査」。『河海抄』の諸本に於ける増補・改訂の後を明らかにすることは、『河海抄』が『源氏物語』を読むという目的以外にいかなる需要があったのかを知るためにも重要である。本年度はいくつかの写本・またはその写真を調査するに留まった。 3 「「抄物」の調査」。学問の担い手の少なからぬ割合の人物が医師であった前近代に於いて、『河海抄』との方法の重なりを念頭に置きつつ、抄物を調査する予定であった。当所の予定とは少しずれるが、『河海抄』に先立つ十三世紀末に医師惟宗具俊が著した『医談抄』について研究論文を発表できたことは先に記した通りである。
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