2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代における文学の中の建築表象に関する研究―西洋的空間の言説表現をめぐって
Project/Area Number |
22520210
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西川 貴子 同志社大学, 文学部, 准教授 (20388036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 佳紀 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (00335465)
藤原 学 京都大学, 人間環境学部, 助教 (60324670)
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Keywords | 国文学 / 建築史・意匠 / 建築表象 / 日本近代 / 文学空間 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀・20世紀の日本における文学と建築という二つの表象形式から、「西洋」空間について具体的に調査するとともに、そうした表象と同時代の科学技術志向及び都市化との関連を解明することを目的としたものである。したがって、文学、建築の共同研究者および協力者の研究をベースに本年度4回の研究会合をもち、研究成果の検証および情報の共有を行なった。また、申請時の研究分担者、協力者以外にも講演者を招き、活発に議論した。考察された主な問題は、谷崎潤一郎作品の建築の問題、泉鏡花作品における空間認識の方法、伊藤整と小樽の建築空間、稲垣足穂と東京の問題、室生犀星の居住空間の位置づけなどである。 それぞれの対象のなかから「近代化」の表象を問う時に重要となる「西洋」空間の表象の意味を析出した上で比較検討を加え、昨年度の成果(昨年度は主に旧植民地・大連を舞台とした文学と建築の関わりに注目し、旧植民地において創造された「西洋」空間を明らかにし、近代日本の空間認識について考察した)と繋げ、多義的な「西洋」空間及び「近代化」の内実に関する考察がより深まったといえるだろう。 特に、本年度のこうした成果を、本研究メンバーと講師として迎えた文学専門家とのタリン大学で開催されたEAJSにおけるパネル発表"Tangible Narratives:The Significance Of Architecture In Modern Japanese Literature"によって提示し、研究情報の国際的発信にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度で旧植民地・大連を舞台とした文学と建築の関わりに注目し、旧植民地において創造された「西洋」空間を明らかにして、その成果を国際シンポジウムとして発表したが、本年度ではさらに、時代や対象を広げ、特に日本国内を舞台とした作品をもとに建築の創造性(「西洋」空間や「近代化」の内実)についても考察を深化させることができた。そして、その成果をEAJSでパネル発表することができたので、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はさらに多くの対象の調査にあたり、本年度の成果とリンクさせる形で、考察を深めていきたい。 具体的には本年度までではカバーできなかった分野の建築、文学の両専門家を講演者をとして招きより積極的な意見交換を行う予定である。 また、最終年度にあたるため、今までの成果を概括し、論集を刊行することを目指している。
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Research Products
(12 results)