2010 Fiscal Year Annual Research Report
| Project/Area Number |
22520214
|
|---|
| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
| Research Institution | Konan University |
|---|
Principal Investigator |
廣川 晶輝 甲南大学, 文学部, 教授 (40312326)
|
|---|
| Keywords | 万葉集 / 墓 / 日中文化交流 / 墓誌 / 伝説 / 高橋虫麻呂 / 田辺副麻呂 / 大伴家持 |
|---|
| Research Abstract |
研究代表者廣川晶輝は、墓自体が持つ、顕示・アピールの機能、「偲び」の回路を開き得る機制の分析において成果を上げた(平成19～21年度科学研究費補助金交付)。この成果を基盤とする本研究課題においては、「墓誌」が生前の偉業や美麗な容姿を称揚する目的上、上記墓の機能・機制を最も顕著に発揚する極めて実体的な存在である点を考慮し、墓誌の表現を分析するに至った。廣川晶輝は、中国出土墓誌の表現分析が日中文化交流に寄与する新説をすでに明らかにしている。また、中国山西省太原市文物考古研究所の李非所長の報告(概要:中国北斉時代(550～577年)の墓の壁画と奈良県明日香村の高松塚古墳(7世紀末～8世紀初め)の壁画には構図などの共通点が多く、日本の古墳壁画の源流を探る手がかりとなる。)を参照すれば、日中文化研究における墓の重要性も明瞭である。廣川晶輝は、こうした研究状況に鑑み、中国出土墓誌に見られる表現が日本上代文学の表現に与えている影響について解明し、日中文化交流の従来指摘されてこなかった道筋を明白にする本研究課題を着想した。本研究課題の目的完遂のため本研究は次の二つの基軸を備える。
1. 中国出土墓誌の第一次資料・史料のデータベース化、および活用。
2. 墓の上記機能・機制の追究のための、墓・古墳の実地踏査の実施。
1.の実施の成果として、中国各地で発見された墓誌を収める『石刻史料叢書』のテキストファイル化・データベース化があり、本年度は『同』甲編之14「京畿家墓遺文」収載の墓誌の文言のテキストファイル化・データベース化を実施した。稀書(架蔵する日本全国の大学図書館は、僅か10大学(巻によっては6大学))である同書による研究を進展させ広く世に資することは重要であり、その意義は大きい。2.の実施の成果として、幹線道である古代東山道の近傍に建つ観音塚古墳(群馬県高崎市。墳丘の長さ105メートル、幅105メートル、高さ12メートル。6世紀末ごろ築造の前方後円墳)の実地踏査がある。踏査によって、この古墳が古代東山道の方向を向いており比定駅路からもよく見えることを明らかにしたことの意義は大きい。
|
