2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520217
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Research Institution | Shohoku College |
Principal Investigator |
伊藤 善隆 湘北短期大学, 総合ビジネス学科, 准教授 (30287940)
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Keywords | 近世文学 / 漢文学 / 林鵞峰 / 林羅山 / 林読耕斎 / 野間三竹 / 石川丈山 / 人見竹洞 |
Research Abstract |
本年度は、まず『篁軒詩稿』(板倉重矩著、板倉重道編、国会図書館鶚軒文庫蔵)を複写物により収集した。板倉重矩は、老中・京都所司代を勤めた譜代大名で、林家周辺で活動した重要人物である。そこで、この詩文集の内容を検討して、本研究の目的を達成するに資する情報の収集につとめた。なお、この作業は、次年度も継続して実施する。 つぎに、西尾藩に仕えた井川春良の資料調査のため、愛知県西尾市に出張した。春良は、その詩文集が伝存不明であったため、従来はほとんど知られていなかった林門の儒者である。研究代表者は、その詩文集を発見し、すでに前年にその本文を報告していた(「井川春良『兼山詩文』-西尾藩儒臣の詩文集-」『湘北紀要』31)が、その地元での研究状況や残された資料の有無を確認するために実施したものである。 さらに、注目すべき資料として、林家林門の儒者たちと親交を結んでいた木下公定(備中足守藩主、号は葵峯)の『桑華蒙求』(大本三冊)、また人見竹洞らの詩懐紙15枚を収集した。後者は、従来注目されることの少ない近世前期の漢学者たちの自筆資料として貴重なものである。 そして、調査の過程で収集した情報を素材として、「近世前期における明末「随筆」の受容-『徒然草』受容の-側面-」と題して論文をまとめた。これは、林家林門で明末随筆が読まれていた事実とその意義について考察したものである。さらに、東武カルチュアの依頼により「江戸教養人の遊び元禄時代の文人趣味」と題して講演を行った(本来は3月20日実施予定だったが、震災の影響で4月24日に延期)。これは、近世前期の林家林門の文事の意義について考察を加えたものである。
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