2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520217
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Research Institution | Shohoku College |
Principal Investigator |
伊藤 善隆 湘北短期大学, 総合ビジネス学科, 准教授 (30287940)
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Keywords | 近世文学 / 漢文学 / 林鵞峰 / 林羅山 / 林読耕斎 / 野間三竹 / 石川丈山 / 人見竹洞 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、『篁軒詩稿』(板倉重矩著、板倉重道編、国会図書館鶚軒文庫蔵)の内容を検討して、本研究の目的を達成するに資する情報の収集につとめた。板倉重矩は、老中・京都所司代を勤めた譜代大名で、林家周辺で活動した重要人物である。 また、当時の漢学や林家と関係のあった大名家の情報を収集するために『楽只堂年録』(八木書店刊)他の近世漢文学関連図書を収集。さらに、複写物としては、『文穆先生遺墨』(東京大学資料編纂所蔵林家資料・林家本34・I、2)他を収集した。 つぎに、関連の資料調査のため、京都府立総合資料館に出張した。具体的には石川丈山や人見竹洞の関連資料を閲覧することができた。 そして、調査研究の成果として、和漢比較文学会全国大会において「丈山の杜甫受容-「拙」をキーワードとして-」と題して発表、同学会機関誌に同タイトルの論文を掲載させて頂くことができた。丈山の杜甫受容に関しては、従来その詩話・詩論を資料として論じられていたが、本論文では具体的に丈山の漢詩に就いて考察した。また、「近世的表現様式と知の越境プロジェクト」において、「明末詩箋の流布と影響-付『文敏先生遺墨』について-」と題して発表をおこなった。『文敏先生遺墨』は、羅山が孫の梅洞の教育のために応酬した詩懐紙をまとめたもの。これは、複写物で収集した『文穆先生遺墨』(鷲峰が孫の春宗に与えた懐紙類)と同様の性格を持った資料で、林家の教育に対する意識を具体的に知ることのできる資料である。 なお、東武カルチュアの依頼により「江戸教養人の遊び元禄時代の文人趣味」と題して講演を行った(本来は3月20日実施予定だったが、震災の影響で4月24日に延期)。これは、近世前期の林家林門の文事の意義について考察を加えたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鷲峰の交遊関係を検討することにより、従来注目されていなかった資料について研究をすすめ、新たな視点から研究成果を報告・発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について、研究計画を大きく変更する必要はないと考えている。すなわち、林鷲峰周辺の人物たちの動向を検討し、従来の研究では注目されなかった資料を見い出し、検討の姐上に上げられなかった資料を分析することで、なるべく巨視的に、当時の漢文学の文化的意味や文化史的な意義を問題としていきたい。
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