2012 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀演劇の非標準英語使用を通じた他者表象の文化研究
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22520224
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩田 美喜 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50361051)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 演劇研究 / アイルランド研究 / 他者表象 / 間テクスト性 / 比較文化論 |
Research Abstract |
4年計画で行われる本研究課題の3年目にあたる当該年度は、初年度に引き続き、広く資料を渉猟するとともに、そこで得られた知見を整理し、最終的な成果発表に向けてマスタープランに沿ったかたちでのこまめな研究成果の発表に務めた。資料/情報収集に関しては、当該年度は本研究者が、6月に急性腹膜炎で緊急入院、12月にも術後イレウスで再度緊急入院するなど健康上の問題があったため、前年度のように海外の大学や図書館まで資料収集に赴く事は出来なかったが、国内での資料収集や国内学会への参加を積極的に行うことによって、研究に大きな滞りは出なかった。 当該年度の主な研究成果発表には、論文を2本発表したほか、国内学会での口頭発表が1本、また慫慂されて参加した国内学会のシンポジウムにおける発表2本などが含まれる。このうちShakespeare News 52:1 (2012)で発表したベン・ジョンソン『エピシーン』論では、劇中でのロンドンの空間表象が、紋章学的比喩表現を用いて、言語的にも断片化されていることを論じた。また、2012年10月に秋田大学で開催された日本シェイクスピア学会における口頭発表では、ジョンソン『新しい宿』における女性表象が、衣服の着脱に関するディクションを通じて描かれていると分析した。このほか、同年12月に慶応義塾大学日吉キャンパスで開催された日本ワイルド協会シンポジウム「ワイルドと世紀末演劇的ヴィジョン ― サロメ・悲劇・喜劇」では、ワイルド劇の喜劇性が、先行テクストの反復である〈引用〉というテクニックに大きく依拠していることを論じた。これらはいずれも、言語の逸脱的な使用が持つ演劇性について考察を加えた研究であり、こうした研究成果は、最終的な成果発表の一部として活用される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の達成度は予定よりもやや遅れている。理由としては、上述のように当該年度は本研究者に健康上の問題が発生し、2度にわたって入院生活を送ることになったことが大きい。急性腹膜炎による実際の入院期間は6月中旬~6月末の2週間強であったが、その後の自宅療養までも含めると8月いっぱい自由に動く事ができず、研究上大きな障害となった。 具体的には、当該年度中に発表した論文2本のうちレフリー付きは1本のみになってしまったが、予定では2本ともにレフリー付きの雑誌に投稿する予定であった。ただし、下半期(9月、10月、12月)に国内学会での口頭発表を集中的に組んでいたために、結果として研究成果発表のペースを例年よりそう落とすことにはならず、年間3本程度のペースを守ることが出来た。 また、現在執筆中の論文も3本あることから、次年度の最終年度には現在の遅れを取り戻して、計画に沿った4年間で、一定の成果を上げる事は十分可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、当該年度での遅れを取り戻し、最終目標の単著の出版をなるべく早期に実現することが肝要である。最終年度にあたる次年度の成果発表の予定としては、6月にモンペリエ、11月にソウルで、国際学会での口頭研究発表が予定されており、国内学会での口頭発表についても、現時点で2件が予定されている。口頭における成果発表については、一定のペースを保っており、特に研究遂行上問題は見当たらない。単著の出版についてもすでに出版社と打ち合わせは始めており、一部原稿を見せたところではあるが、こちらについては当該年度の健康問題が響いて、原稿の進みが予定よりも遅れていると言わざるを得ない状況にある。 この遅れを取り戻すため、また特に入手に困難を感じている資料などはこれまでのところあまり無いので、次年度は夏期や冬期の休暇期間に長期の出張を入れず、集中的に論文執筆に時間を充てる予定である。それでも、次年度中の出版は難しいことが予想されるが、少なくとも本研究課題に関する単著の原稿の大部分を、最終年度である次年度中に執筆し、さほどの遅れがない状態で、最終成果発表にこぎ着けたい。
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Research Products
(5 results)