2010 Fiscal Year Annual Research Report
シェイクスピアの哲学的思想の近代初期における系譜学的考察
Project/Area Number |
22520227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 康成 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10116056)
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Keywords | シェイクスピア / 共和制 / 絶対君主制 / 自然 / 契約 / 世俗化 / 合理化 / ホッブス |
Research Abstract |
本年度は、「世俗化・合理化」という主題軸にそって、いくつかのシェイクスピア作品とフランシス・ベーコンの思想を比較検討する予定であったが、いくつかの理由により、第二年目に予定をしていたトマス・ホッブスとの検討をまず行うこととし、ベーコンは次年度に回すことにした。シェイクスピアの政体論を考えるとき、そのローマ劇に顕著な「共和制」を中心に据えて考察を進めるのが便利でもあり、また正当だとすれば、その延長戦上に考えうるベーコンよりも、まずはそれとは根本的に異なり、しかもその後の近代の政治理論を基礎づけたホッブスの政治哲学的理論を比較検討するほうが、本研究全体のパースペクティヴが得やすいと考えたからである。さて、ホッブスの政体論の根本には、「自然状態」における利己的保身の欲求、その欲求を合理的に共通の利益へと変換する装置としての君主国家、それを保証する権限の委譲に関わる「契約」などがある。そこで、シェイクスピアとの比較においては、「自然的欲望」と「理性的契機としての契約」の二点に絞って検討を加えた。前者では、宇宙と個のコスモスとしての照応の問題、再生原理の問題、性差的原理の問題が、後者では、共同体における「個」の身分と特性の問題、「個」を成り立たせる「他者」の問題、などが重要なものとして浮上した。さらに、歴史言説の文脈では、シェイクスピアのリウィウス・モデルとホッブスのトゥキュディデス・モデルという古典的テクストの対照が見えてきた。
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