2010 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズム文学における身体と人間関係の機械化に関する研究
Project/Area Number |
22520228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 芳樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20251746)
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Keywords | モダニズム / 身体 / 機械化 |
Research Abstract |
本年度は5年間の研究計画の最初の年であり、基礎的な文献を読む作業を中心に行なった。ベケットの『ゴドーを待ちながら』に見られるような喜劇的な二人組は、ルネッサンズ、さらには古代ローマ喜劇にまでその起源をさかのぼることができることを、道化論から学んだ。おそらくマルクス兄弟、チャップリン、キートンらは、二人組そのものではないにせよ、それに類する芸を映画という20世紀的なテクノロジーの中で再生させたのであり、それがウィンダム・ルイスやベケットに流れ込んでいる、という流れを大づかみながらつかめたのではないか、と思う。 また、そのような20世紀的二人組=「疑似カップル」の概念を明瞭に打ち出した批評家フレドリック・ジェイムソンについて、大学院の授業で集中的に読み、彼のモダニズム観がどのようなものであるか全体像をつかむことがある程度できるようになった。 そのほか、6月27日に英国レディング大学から若手ベケット研究者コナー・カーヴィル氏を招聘し、"Beckett, Contemporary Art and the Idea of the Avant-Garde"という題で講演をしてもらった。これはベケットの作品がさまざまな現代芸術家に及ぼしたインパクトに関するもので、ベケットを二十世紀の美術の中で位置づけるのにきわめて有益であった。カーヴィル氏とは、「疑似カップル」についても意見と情報を交換し、特にアイルランド文学との関連で貴重な示唆を得た。
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