2011 Fiscal Year Annual Research Report
西洋文化圏における「凝視」と「注意」の文化史的意義の研究
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22520231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 公彦 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (30242077)
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Keywords | 英文学 / 美術 / 英語 / 凝視 / 西洋文化 |
Research Abstract |
平成23年度の研究成果の中心となったのは、平成22年度の終わりまで連載された「文學界」誌上での「凝視の作法」の、単行本としての出版に向けた準備である。連載は一回読み切りを意識したこともあって、やや連続性・全体性にかけるきらいがあったので、今回の改稿では(1)章の入れ替え、(2)章タイトルの再考などを行うとともに、より広く一般読者に向けた成果発表となるように、(3)やや難解な箇所の削除や修正を行い、また、(4)あたらしい情報を加えるなどの作業をつづけた。 このような作業と平行して、今回の研究成果を応用的に活用する形でナサニエル・ホーソン、ウォレス・スティーヴンズ、夏目漱石などについての研究発表も行い、各地(北海道、九州、大阪)の研究者と意見交換を行うこともできた。 また、「凝視」と「注意」についての研究は、最終的には広い意味での批評行為そのものについて、あらためて考え直すための布石ともなっていたが、その結実として、平成23年3月には『小説的思考のススメ』(東京大学出版会)を刊行することもできた。これは啓蒙書の体裁をとってはいるものの、実際にはメタ批評的な側面ももった、つまり批評についての批評という趣をもった研究であり、そうしたアプローチをとることで、批評という行為のあらたな可能性について考察することができたと思っている。 さらに、平成23年度に筆者がコーディネーター兼講師として参加した「朝日講座-知の冒険」における研究者たちとのやり取りも、あくまで間接的な形でではあるが、本研究の方向に貴重なヒントを与えてくれたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最大の目標としたのは、「凝視の作法」連載の単行本化であり、その作業はかなり進めることができた。平成24年度の半ばには刊行予定である。また、『小説的思考のススメ』についても、平成23年度中に刊行することができたのは、やや間接的ではあるが、成果発表という意味では意義深いことだと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度については、予定通り「凝視の作法」を完成させるとともに、その延長上にある「ポライトネス」研究を進展させることを視野に入れている。これは現在「Web英語青年」という媒体で連載をつづけている研究で、凝視や注意といった要素について、より広く人間関係の構築というコンテクストの中で再考しようとするものである。こちらも連載終了時点ではよりまとまった形での公表をすることを念頭においているが、その前にはさらなる調査・分析と総合化の作業が必要になるものと思われる。
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