2013 Fiscal Year Annual Research Report
西洋文化圏における「凝視」と「注意」の文化史的意義の研究
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22520231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 公彦 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (30242077)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 凝視 / 英文学 / 日本文学 / アメリカ文学 / イギリス文化 / アメリカ文化 |
Research Abstract |
平成25年度の最大の実績としてあげられるのは、24年度の実績であった『文学を〈凝視する〉』〈岩波書店〉)を元にした諸活動や成果の公表である。とくに日本英文学会におけるシンポジウムでの発表は凝視を出発点にしつつも「のぞき」や「暴露」といった問題に話題を進めることで、近代社会における知の方法がどのように小説ジャンルの形成に結びついたかを考察したものであり、また京都造形美術大学で行った講演は、小説を超えて映画にまで「凝視」の問題をひろげたものである。その一方で「〈目の失敗〉の物語 ― ウォレス・スティーヴンズとハワード・ホジキン」(庄司宏子編『絵のなかの物語 ― 文学者が絵を読むとは』〈法政大学出版局 2013〉)は、詩を話題の中心にしたものである。 こうした研究成果からもわかるように、「凝視」の問題は小説や映画といった個々のジャンルにとどまる問題ではなく、また狭い地域に限定されるものでもなく、ある程度地域にまたがった普遍性とともに、またジャンル間をも横断しながら、みとめられるものだと言える。 そうした問題意識の結実の一つとして、平成25年度には『詩的思考のめざめ ― 心と言葉にほんとうは起きていること』という書物を公にすることもできた。これは必ずしも全篇が凝視にかかわっているわけではないが、「名前をつける」「数え上げる」といったテーマは凝視とも密接にかかわっているもので、この著書も凝視研究の延長上に位置づけられるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に行った中間まとめとしての著書『文学を〈凝視する〉』を出発点にしての成果公表はおおむね順調に進んでいると考えている。また、凝視の研究はこれをもって終着点とするものではなく、平成25年度にすでにはじめたような、「のぞき」や「注意散漫」の研究とも連動する形で進めるべきものと考えているが、そのあたりの端緒となる活動ができたことは意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究の最終年度にあたるので、成果をいったんはまとめ、形にして提出することに主眼を置く予定である。凝視の問題は、「のぞき」「注意散漫」さらには「共視」といったように、かなり広がりをもった領域であり、できれば今後も研究をつづけることで、広い意味での「視線の現象学」といえるような研究を進めていきたいと考えているが、今年度については、おもに凝視と「のぞき」「注意散漫」に的を絞って調査の補足と成果公表とを行う予定である。
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Research Products
(7 results)