2011 Fiscal Year Annual Research Report
英国18世紀の人生の物語に関する研究:個人の経験・物語の共有・公共心
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22520236
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 実佳 静岡大学, 人文学部, 教授 (40297768)
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Keywords | 英米文学 / 西洋史 / 公共心 / 手紙 / 感受性 / 出版 |
Research Abstract |
今年度の目標は、資料分析を進めることと、文学研究の成果を学術誌に投稿するということであった。資料分析はある程度進めているが、学術誌への投稿が思うように進んでいない。資料は、主にスペンサー伯爵夫人が、ほぼ毎日手紙を交わしていたキャロライン・ハウとの間の双方の書簡をはじめとして、多くの人々と交わした手紙(出版されておらず、そのまま残っている)や彼女がつけていた記録である。具体的に書き進めている1本(過去を語ることの手法や意味について)については、海外の査読付き学術誌への投稿に向けての準備に目途がたってきたが、当初の目標は、今年度中に出版だったので、遅れている。デヴォンシャ公爵夫人の詩の出版や公の場に出る機会と小説の出版についての態度のとりかたと、その母のスペンサー伯爵夫人の「著者」の立場に関する考え方を比較して、出版物にかんする価値観を考察する論文については、求めていた決定的な証拠がアーカイヴで得られなかったために、構想を新たにして準備中である。 今年度の研究実施計画の3点目に挙げた宗教と文学をめぐる議論については、昨年度の教育書からの視点とは違った側面から新たに研究構想の範囲内に入れたい事項を探ることができた。デヴォンシャ公爵夫人の孫にあたるGeorgiana Fullerton(1812-85)の著作である。彼女の場合は、詩作と翻訳から始めたが、編集者の忠告に従い、散文の著作に切り替え、最初の小説から宗教色の濃いものであったが、カトリックへの改宗を経て、16世紀の日本のキリスト教徒を題材にした作品も出版した。この人物と作品を主体にした研究を行うつもりはないが、書くという行為と出版に関して、18世紀から19世紀のスペンサー伯爵夫人からつながる家系の女性たちの世代間の差異を、宗派による差異を考慮しながら論考に組み込んでいきたい。 他に、既に校正を済ませて来年度初めに出版予定の論考と、審査にかかっている書評がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夏期休暇中に、手紙及び日記資料閲覧のためにイギリスを訪れることができたが、期間を一週間程度しかとることができず、資料が膨大であるので、それでは時間が短く、十分に読むことができなかった。それに伴って論文を書くことも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
膨大で、豊かな内容をもつ資料を読み進むことは、これまでと同様、大切にしていくべきであるが、それをすべて読破し、研究の範囲に入れることが困難であり、不可能かもしれないということを受け入れて、これまでに得ているものでできることを順次発表していくことを考えていく。
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