2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代初期英国における奉公人文学と社会的流動性との関連についての歴史的研究
Project/Area Number |
22520238
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
滝川 睦 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90179573)
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Keywords | 英国文学 / 近代初期英国 / 奉公人文学 / 社会的流動性 / 奉公 / 従者 / 地位逆転 / マスターレス・マン |
Research Abstract |
1. 近代初期英国における奉公人文学作品を分析し、それらに表象される奉公の概念と16-17世紀英国社会における奉公の概念との差異を、奉公人文学の特徴をデータベース化する作業を行いながら、明らかにした。 2. 古代ローマのプラウトゥスなどの喜劇で表象される、主人と従者の地位逆転を軸とした、サトゥルナリア的農神祭のリズムが、近代初期英国の奉公人文学における基調音の一部になっていることを解明した。方法論としてシー・エル・バーバーが提起したものを援用した。 3. 社会的身分や地位の上昇・下降などにみられる近代初期英国における社会的変動と結びついた奉公の概念が、当時の文学作品において表象されるメカニズムを、具体的な作品分析に基づいて解明した。具体的にはシェイクスピアの『マクベス』におけるマスターレス・マンの登場、マクベスによる国王殺害、王位纂奪、そしてマクベスの失脚のダイナミックッスは、従者が一時的に権力を掌握する、サトゥルヌスを称える古代ローマの農神祭のリズムが再現/表象されているだけでなく、マスターレス・マンを多数生みだした近代初期英国の都市・農村の社会的変動と深く結びついていることを証明した。 4. 上記の1から3までの分析の結果を総合して、近代初期英国における奉公の概念を定義づけ、奉公人文学のジャンルの生成と発展のメカニズムを実証的に解明した。
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