2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代初期英国における奉公人文学と社会的流動性との関連についての歴史的研究
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22520238
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
滝川 睦 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90179573)
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Keywords | 英国文学 / 近代初期英国 / 奉公人文学 / 社会的流動性 / 奉公 / 従者 / フィギュレンポジツィオン / 近代初期主体 |
Research Abstract |
(1)近代初期英国における奉公人文学を分析し、それらに表象される奉公の概念と16-17世紀英国における奉公概念との差異を、奉公人文学の特徴をデータベース化していく過程において明らかにした。(2)前年度に引き続き、古代ローマ喜劇以降の奉公人文学の系譜および近代初期イタリアのコメディア・デラルテ(commedia dell'arte)の系譜と、近代初期英国における奉公人文学の伝統との関連性について分析した。(3)五月祭、スキミントン(シャリヴァリ)、懺悔火曜日の無礼講などに焦点を絞って、近代初期英国の社会的流動性と連動した若者文化と、奉公人文学との関連性を明らかにした。また、当時の若者文化と不即不離の関係を結んでいるインタルード(interlude)-the Prodigal Son、youth、Lusty Juventus、Nice Wantonなど-を分析の対象とすることで、若者文化と奉公人文学との重層的関係を解明した。(4)近代初期英国演劇についてRobert Weimannが指摘する、劇的イリュージョンが存分に生成されるロクス(locus)と役者と観客が笑いを共有できるプラテア(platea)、そして奉公人文学の系譜に属する芝居に登場する奉公人が拠って立つフィギュレンポジツィオン(Figurenposition)との関連性を、とくにShakespeareのTwelfth Nightを分析していく過程において解明した。(5)上記(1)から(4)までの分析の結果および前年度の分析結果を総合して、近代初期英国における奉公概念の定義とその特異性のデータベース化し、奉公人文学のジャンルの生成と発展のメカニズムを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の応募時に提出した「応募内容ファイル」に記述した「研究目的」の(2)「研究期間に何をどこまで明らかにしようとするのか」および「研究計画・方法(概要)」に記した計画事項、さらに平成22、23年度の科学研究費補助金交付申請書に記した研究実施計画の項目をほぼ実施できているがゆえに、上記の評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
近代初期英国における国家概念のもとに形成された宮廷社会の主従の観念を本課題の分析視座にとりこむことにより、これまで行ってきた、奉公人文学と近代初期英国社会の流動性との関連性をよりダイナミックにとらえることができると予想される。そうした視座を今後の研究推進方策に取り込み、課題の遂行につとめる。
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