2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520249
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
上岡 克己 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 教授 (10135973)
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Keywords | アメリカ文学 / 自然保護運動 / レイチェル・カーソン |
Research Abstract |
研究課題「アメリカ文学と自然・環境保護運動」の中で、22年度はレイチェル・カーソンと自然保護運動との関係を取り上げた。カーソンについては、代表作『沈黙の春』との関係で、アメリカの環境保護運動との関連が重視されてきた。しかしカーソンが環境について知る前に、彼女は自然や自然保護に関心を持っていて、それが彼女を真摯な環境保護者にさせたように思われる。本研究では、カーソンの所期の作品、特に日本ではまったく紹介されていない彼女の新聞や政府広報紙に掲載された作品を取り上げ、彼女の自然保護への関心や意識がどのように発展していったかを検証した。 この検証の結果、カーソンと自然保護とのかかわりは、いくつかの段階をへながら徐々に熟成されていったと考えられる。もちろん彼女はミューアやブラウアーのような自然保護運動を引っ張ってゆくタイプではなかったが、彼女が天分としてもっていた自然科学者と詩人の二つの要素が融合して、新しい価値観や自然観を作り上げていったと考えられる。それはエコロジー思想であり、ネイチャーライティングの伝統であり、最終的には、彼女がもっとも尊敬していたシュバイツァーの唱えた「生命への畏敬の念」という哲学にたどり着く。
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