2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520251
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 一昭 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (10123803)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | ロンドン書籍商組合 / 組合記録 / 版権 / 出版登録 / シェイクスピア / 版本 / 戯曲 / 宮内大臣一座 |
Research Abstract |
論考「1600年8月4日の“staying entry”はいかに解釈すべきか――ロンドン書籍商組合記録再考――」を刊行した。 1600年8月4日のロンドン書籍商組合記録に、宮内大臣一座の4作品(As You Like It, Henry V, Every Man in His Humour, Much Ado about Nothing)の、いわゆる“staying entry”が見える。この記載が何を意味するかについて、諸家の見解は分かれる。多くの研究者は、一種の「出版阻止登録」と見る。つまり、これは何らかの理由で出版が阻止された記録だというのである。阻止しようとしたのは、この4本の劇を所有する宮内大臣一座である。阻止しようとした理由は2つに大別される。一つは他者による無断出版を防ぎ、出版料(原稿料)を確実に得るためであり、もう一つは出版によって他の劇団が脚本を入手することを防ぐためである。このような出版阻止説に対して、この記載は提出された原稿が公式検閲者の認可を得ていなかったことを示しているという見方がある。ごく大まかに言えば、8月4日の「登録」は以上のように解釈されている。本稿は、このような従来の諸説を批判的に検証し、次のように結論している。 1600年8月4日の記録は、出版阻止の「登録」ではないし、出版を禁止したことの記録でもない。それは、4作品の登録申請がなされたものの、なんらかの理由で登録が保留されたことを伝える覚書にすぎない。推測される理由は、次のとおりである。(1)公式検閲者の検閲に付されることが好ましいと思われる作者の作品、つまりジョンソンの『気質くらべ』が検閲者の認可を得ていなかった。(2)版権の確認ができなかった。 組合の書記は、予想される、近い将来の登録再申請のリマインダーとしてこのメモを残したのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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