2011 Fiscal Year Annual Research Report
翻案映画におけるシェイクスピア受容のインターテクスチュアリティ
Project/Area Number |
22520252
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大島 久雄 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (80203769)
|
Keywords | シェイクスピア / 受容 / 翻案映画 / 娯楽ジャンル映画 / インターテクスチュアリティ |
Research Abstract |
平成22年度にBritish Film Institute (London)とShakespear Institute (Stratford-upon-Avonで実施したシェイクスピア翻案映画とシェイクスピア受容に関する基礎研究を発展させつつ、インターテクスチュアリティ受容批評理論を実践的に応用し、娯楽ジャンル映画におけるシェイクスピア受容の解明に取り組んできた。特に19世紀以来の視覚的なシェイクスピア受容に着眼することによって、サイレント映画から初期娯楽ジャンル映画(西部劇・ギャング映画等)、さらには日本の明治時代におけるシェイクスピア受容から黒澤明のシェイクスピア映画『蜘蛛巣城』・『乱』を経て、現代における蜷川幸雄や野村萬斎の日本的なシェイクスピア上演(主として『テンペスト』を分析対象とした)へとつながるシェイクスピア翻案受容の伝統形成を指摘し、サイレント映画・戦後娯楽翻案映画・日本的シェイクスピァ翻案伝統に関するケーススタディによって、翻案映画・舞台演出におけるローカルな文化的・歴史的言説と演劇伝統の利用がグローバル化する世界におけるシェイクスピア作品の審美的価値と存在意義を高めていることを明らかにした。 上記の研究成果の一部は、チェコ共和国プラハで開催された第9回シェイクスピア国際会議(カレル大学:2011年7月17~22日)におけるセミナー"Four Hundred Yearsof The Tempest"(座長:Tobias Doering & Virginia Mson Vaughan)においてNinagawa Tempest and the Japanese Traditionof Shakespearean Adaptation : Prospero, Shakespeare, and ZeamiinSado Island"という題目により発表し(18日)、ポルトガル共和国ポルトで開催された『テンペスト』上演四百年記念国際学会"Dashed Allto Pieces : Tempests and Other Natural Disaster in the Literary Imagination"(ポルト大学:2011年12月1~3日)においては"Shipwrecks in the Kabuki Style : The Tempests in Japan"という題目で研究発表を行った(2日)。これらの論文は、上記セミナー・国際学会の発表論文をまとめた公刊学術書に掲載されることがすでに決定し、平成24年度に刊行される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第9回シェイクスピア国際会議(チェコ共和国プラハ)と『テンペスト』四百年記念国際学会(ポルトガル共和国ポルト)という二つの国際学会において研究成果を発表し、その研究内容が認められて、学術書として公刊予定の論文集に両論文ともに掲載されることが決定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、米国のシェイクスピアの中心的な拠点であるFolger Shakespeare Libraryにおいて戦後期翻案映画におけるシェイクスピア受容に関する調査と資料収集を行い、研究内容の充実を図るとともに、日本の関連学会においても研究発表を行い、関連学術誌への論文の投稿を行う。研究成果の社会還元のために市民対象の公開講座も企画する。
|
Research Products
(2 results)