2012 Fiscal Year Annual Research Report
翻案映画におけるシェイクスピア受容のインターテクスチュアリティ
Project/Area Number |
22520252
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大島 久雄 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (80203769)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | シェイクスピア / 受容 / 翻案映画 / インターテクスチュアリティ / 地域性 |
Research Abstract |
本研究の三年目にあたり、これまでの研究成果をとりまとめて、論文化して公表し、関連学会で発表するとともに、アメリカ映画におけるシェイクスピア受容史研究資料の収集のためにフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリ(米国ワシントンDC)を訪れて娯楽ジャンル映画におけるシェイクスピア受容に関する調査・資料収集を行った。 発表論文としては、昨年度のシェイクスピア国際会議においてセミナーにて発表した日本における『テンペスト』受容に関する論文が評価され、本年度、ドイツ出版社Narr Verlagより英文学書REALシリーズの一冊として刊行予定の"Critical and Cultural Transformations: 'The Tempest', 1611 to the Present"において"'The Tempest' and Japanese Theatrical Traditions: Noh, Kabuki, and Bunraku"というタイトルで掲載されることが決まっている。 学会研究発表に関しては、ベルギーのゲント大学における国際学会"Psychology and the Arts"に参加し(7月3日~5日)、日本における『テンペスト』受容のインターテクスチュアリティについて発表した。11月2日~4日は漢陽女子大学(韓国、ソウル)における日本演劇学会ソウル集会「演劇の未来~日本と韓国」に参加し、韓国人・日本人九州大学大学院芸術工学研究院修士学生各一名とともに日本と韓国におけるシェイクスピア受容に関する地域性について共同研究発表を行った。 研究成果の社会還元としては、九州大学大学院芸術工学院が毎年開催している市民対象公開講座として9月~10月木曜日19:00~20:30にシェイクスピア翻案映画受容研究の成果を取り入れた「映画で楽しむシェイクスピア」(全5回)を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のように、研究成果が著名なドイツ出版社の英文学書シリーズREAL(Research in English and American Literature)の一冊に収録されることが決定し、25年度内に公刊される。24年度内に国際学会研究発表を二件、関連海外研究機関での調査・資料収集を行い、海外の研究者との交流を深めることにより、地域性を重視したローカルなシェイクスピア受容のプロセスに関して国際的理解をより深めるとともに、日本におけるシェイクスピア受容のインターテクスチュアリティに関する研究成果を国際的に発信することができた。フォルジャー・シェイクスピア・ライブラリにおいてはシェイクスピア翻案映画に関する貴重な一次資料を入手することができた。さらに能・狂言・歌舞伎・文楽という日本の伝統芸能が日本における『テンペスト』受容に及ぼした影響に関して具体的な事例研究を行い、研究成果として発表・論文化することができた。研究成果の社会還元に関しても、上記のように公開講座「映画で楽しむシェイクスピア」を実施し、受講者アンケート集計結果によると好評であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度にあたるので、これまでの研究成果や調査・収集してきた研究資料をさらに充実させ、翻案映画シェイクスピア受容のインターテクスチュアリティに関する研究の集大成として、インターテクスチュアリティ受容批評の方法論を事例研究において実践的に検証・構築する。 特に娯楽翻案映画におけるシェイクスピア受容に関してその歴史的過程や地域性に注目しながら日米映画史におけるその意義を検討し、西部劇・ギャング映画・ミュージカル映画などハリウッドで制作された娯楽ジャンル映画におけるシェイクスピア受容と比較しながら、黒澤明のシェイクスピア映画や蜷川幸雄・野村萬斎らのシェイクスピア上演などに見られる地域性や歴史性を取り入れた日本のシェイクスピア受容のインターテクスチュアリティについて明らかにしていく。これらの受容事例は、明治期のシェイクスピア受容とも本質的な部分で密接な関係を有し、このようなシェイクスピア翻案伝統の中に位置づけた受容事例研究を行うことにより、これまでの日本におけるシェイクスピア受容史研究の再検討を目指す。 研究成果は、最終的には報告書としてまとめるが、論文化して、関連学会で発表し、関連学会誌に投稿する。7月にポルト大学(ポルトガル)で開催予定の国際学会"Psychology and the Arts"では、黒澤明のシェイクスピア映画における心理描写における伝統芸能の影響に関する研究発表を行う予定である。翻案映画におけるシェイクスピア受容のインターテクスチュアリティ研究成果をまとめた学術書の執筆を行う。 研究成果の社会的な還元としては、昨年に引き続き、シェイクスピア受容研究の成果を取り入れた市民対象公開講座「劇場で楽しむシェイクスピア」の9月木曜日19:00~20:30全四回実施が決定している。
|
Research Products
(3 results)