2012 Fiscal Year Annual Research Report
男性ホモソーシャリティとジェンダー支配を近代から現代に辿るトマス・ハーディ研究
Project/Area Number |
22520256
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
亀澤 美由紀 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60279635)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
|
Keywords | 英文学 / ジェンダー論 / 表象 |
Research Abstract |
本研究ではトマス・ハーディのテクストを身体・ことば・貨幣の象徴交換としてとらえ、近代から現代を通じて社会が経験してきたシステム変動――性の揺らぎ・文学ジャンルの動揺・経済システムの変化――が個々バラバラではなく、密接に関連した事象であることを明らかにすることを目的としている。今年度発表した『森林地の人々』論では、リアリズムと貨幣経済との関係を論じた書『言語の金使い』(J.J.グー)に依拠しつつ、『森林地の人々』のテクストが、交換財(象徴)のもつ転覆させる力を、経済変動に対する当時の人々の不安と重ねて描き出している事実を明らかにした。 上記の研究過程において「テクスト化された身体」の概念をハーディ研究に援用することの可能性が見えてきた。参照したのはFrancis Barker,The Tremulous Private Body: Essays on Subjection(フランシス・バーカー『振動する身体』)である。バーカーは17世紀にはいって身体や性が「私的な」ものとなり、生身の肉体をくり抜かれ(脱身体化・テクスト化)されて不可視の存在とされたうえで、あらためて表象されるようになったプロセスを説き明かしている。テクスト化された身体が、演劇の表象性を隠蔽するブルジョワ・リアリズムにつながるという主張を、本研究の柱である<身体とことば>のテーマに結びつける可能性が急浮上してきた。そのことを『キャスターブリッジの町長』『ジュード』に援用し、特に後者ではジュードの身体性と『ジュード』のリアリズム崩壊とが絡み合っている事実を現在析出している最中である。 身体論という軸をいれることによって、ことば・文学様式(ジャンル)・貨幣・女性の身体について、より包括的に考えることが可能になった。
|
Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
|