2012 Fiscal Year Annual Research Report
英国歴史小説の歴史化―啓蒙・ロマン主義時代の交渉とポストモダンの応答をふまえて
Project/Area Number |
22520264
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 優子 青山学院大学, 文学部, 教授 (70265445)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 英米文学 / 文学論 / 西洋史 / ケルト |
Research Abstract |
本研究はポストモダン歴史小説が提示する小説作法や先行作品への応答に鑑みつつ、新歴史主義的観点から啓蒙・ロマン主義時代の英国歴史小説の同時代性や過去と現在の関係性の構築に注目するものである。ウォルター・スコットの作品を主な分析の対象としつつ、今年度は特に歴史小説における歴史の語りとその共有や、19世紀小説における写実主義との関係という観点から、作品の語り手と読者、派生的作品に着目し、小説というジャンルをめぐるロマン主義時代の展開に関する再検討を試みた。 なかでも『ウェイヴァリー』(1814)を中心に、近代ブリテンにおける歴史的内乱という題材と新たな(歴史)小説の創造について、同時代の記録や歴史書、同種の先行作品における内乱の表象や語り、および後続作品における習俗描写の特徴と比較しつつ考察した。特に、この作品における身体をもち自己言及的な語り手が、過去と現在の分節化と接続を含め重層的な時間を喚起することで読み手(とその共同体)の身体性・歴史的特殊性をも立ち上げ、それが先行作品との差異化を図る特徴にして、再読という行為の作品内への構造化に関与し、この小説における「歴史叙述」に時差や異なる解釈を呼び込む効果について分析を進め、あわせて、のちのポストモダン歴史小説によるこの語り手像の継承について検証した。また、小説以前のスコット作品における複眼的・立体的な土地の表象やその小説への発展的展開も考慮しつつ、過去の習俗の克明な記述を要請される歴史小説の試みと19世紀英国小説一般における写実的描写について、歴史小説を題材とした画集や写真集における「写実性」との関連から比較・検討を試みた。 以上の歴史小説の語りやジャンル的交渉をめぐって、2012年7月に開催された国際スコット会議等にて発表をおこなった。また、発表後の意見交換をふまえて論文にまとめ、共著の論文集の一部として刊行の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)