2010 Fiscal Year Annual Research Report
オースティンを中心とした18世紀後半~19世紀初頭の英国小説の歴史的・文化的研究
Project/Area Number |
22520272
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
武井 暁子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00403634)
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Keywords | イギリズ / 歴史 / 18世紀 / 19世紀 |
Research Abstract |
本年度はロバーツ,バトラー,セイルズらの先行研究を再読し、ジェイン・オースティン(以下JAと略)作品における軍隊制度の誕生→植民地の拡大→アメリカ合衆国独立→フランス革命→国力の増大→中流階級の富の蓄積→階級社会の再構成→摂政時代の文化的爛熟までを一貫して時系列的に俯瞰し、JA作品を歴史的コンテクストの枠組みの中で読み直した。 成果は主に学会発表2件において公開した。1件は7月に開催された日本オースティン協会シンポジウム「ジェイン・オースティンが書いたイギリス-再読で浮かび上がる変動の時代」で司会・講師を務めた。研究代表者は「奴隷貿易-ファニーとジェインの口の端にのぼるとき」と題する発表で、トマス・クラークソンの著作を引用しつつ、当時の奴隷解放運動や奴隷貿易の実態に言及し、JA作品の新たな読みを提示した。この発表は加筆して、平成24年度に共著として出版する予定である。 もう1件は10月に開催された北米オースティン協会の年次大会で、"The Art of Lying and Fiction-Making in Northanger Abbey"と題する発表で、摂政時代に中流階級の富の蓄積の副産物として、温泉保養地への旅行が流行したことを明らかにし、この作品の中心舞台であるバースに集う人々の生態を論じた。 さらに、JA作品を読み進めるうちに、イギリスの主要な植民地の一つであるインドの知識階級に興味を持ち、ヴィクラム・セート『婿探し』(1994)とJA作品の類似性について考察した。 8/22~9/6までロンドンに出張し、大英図書館等において資料収集を行った。
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