2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520277
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アフリカ系アメリカ人 / 黒人文学 / 黒人文化 / 口頭文化 / 声の文学 / African American Culture / Oral Tradition / Folksongs & Folktales |
Research Abstract |
【アメリカ黒人の仕事歌】 黒人の歌声は、南部育ちの白人には愛する風景の一部であり外部者には南部の大きな魅力のひとつであった。現在記録として残存する黒人歌は、1910年代までは黒人たちの仕事の現場で聞き取りで採録されている。採録者は、幼い頃黒人歌を身近に聞いていてその魅力と現実的な効力を体験的に知っている白人が少なくない。 20世紀前半までの農村歌は奴隷時代の歌をよく引き継いでいて、つながりを表す特徴をそなえている。ひとつは、虫や動物のような生き物との身近な関係が見える点である。古い黒人歌は日常のスケッチであり、自然との距離が短い。文字言語を使えず社会の動勢も知らされない情報弱者の黒人にとって、本能的に行動する動物は重要な情報源であり学びのテクストだった。奴隷歌の流れを汲むもうひとつの特徴は、白人批判や社会批判が寓話的にカモフラージュされ、他の話題にまぎれて何気なく歌い込まれることである。さらに重要な特徴は、歌の多くがユーモラスなことである。笑いを誘う歌には、心身の負担を忘れ些細な出来事にも大きな楽しみを見いだそうとする感情的エネルギーがある。 鉱山や鉄道現場の労働者、波止場の荷揚げ人足、船でロープを引いたり巻き上げ機を押す船員もよく歌った。集団の重労働に携わる人々はリズムを合わせて働かなければならないから、歌が不可欠だったのである。黒人のハンマーソングは農村の歌に並んで特別な重要性を持っている。「フィールドハラー」とよばれる奴隷時代の歌の伝統を保っていること、歌詞に陰影が深いこと、黒人刑務所の強制労働現場で60年代まで労働歌の機能を果たしながら歌い継がれていたこと、の三点である。19世紀末から20世紀にかけてアメリカの労働現場は急速に機械化し、黒人の仕事歌は勢いを失っていった。しかし、もっとも重労働である開墾や鉱山の採掘には、黒人男性の受刑者が雇われそこで仕事歌が残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカンアメリカン口頭文学の各ジャンルについて、1、2分野を残してリサーチを終え、課題に関する研究全体を総括する本を執筆中である。来年度その執筆が終われば、計画通りの達成度である。
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Strategy for Future Research Activity |
調べ残した Toasting 分野について論文を書く。全体を総括する本を執筆し終える。
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Research Products
(2 results)