2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22520279
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
和田 葉子 関西大学, 外国語学部, 教授 (00123547)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中英語 / アイルランド / 諷刺 / ラテン語 / フランス語 / フランシスコ会 / 論証学 / 死の兆候 |
Research Abstract |
平成24年度は、14世紀にアイルランドで書かれた英語、フランス語、ラテン語による作品を収録した写本、London, Britsih Library, MS Harley 913から、英語にラテン語を交えた中世の論証学を諷刺した詩、Nego(「私は否定する」)と、老いの様々な兆候を一人称で表現した詩、 Eldeの2つの作品を中心に研究を進め、前者については、5月に日本英文学会全国大会において、シンポジウム"Negotiating Linguistic Boundaries in Old and Middle English Literature"を企画し、司会をするとともに“The poem Nego of London, Britsih Library, MS Harley 913: a revolt against contemporary dialectics at the universities?”を発表した。後者については、2月に、関西大学東西学術研究所研究例会において、「中世アイルランドのある老人のつぶやき―London, British Library, MS Harley 913収録の中英語詩Eldeについての一考察」を発表した。また、昨年度の研究成果は、関西大学東西学術研究所紀要に掲載して刊行した。 8月には、計画通り、イギリス(ロンドンの大英図書館及びケンブリッジ大学図書館)とアイルランド(ダブリンのアイルランド国立図書館及びウォーターフォード市図書館)において、研究調査及び資料収集し、日本国内では入手できない資料を、版権の許す限り、コピーをとり帰国後も利用できるようにした。中世アイルランドの社会背景に関する図書資料も購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の実績概要に記した通り、イギリスとアイルランドでの研究調査も計画通り遂行し、論文と口頭発表で成果を発表することができた。企画・発表をしたシンポジウムでは他のパネリストであるRichard Kelly教授(近畿大学)とPatrick O'Neill教授(アメリカ合衆国ノースカロライナ大学チャペルヒル校)と有意義なディスカションをする機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、アイルランドで書かれたLondon, British Library, MS Harley 913を中心に研究を続ける。この写本には多くの優れた作品が収録されているにもかかわらず、イングランドで書かれていない、という理由のために、ほとんど全ての作品がこれまで注目を集めてこなかったのは残念である。一見、様々な種類の作品が雑然と並べられ、編纂されたように思われるHarley 913であるが、写本の全体像を眺めてみると、実は、各作品がその前後に位置している他の作品と関連していることが察せられる。そのような点にも注意しながら、諷刺詩に焦点を合わせ、一つ一つの作品の解釈を丁寧にしてゆきたい。当時のアイルランドの政治状況や社会背景を知らなければ、理解できない内容の作品も少なくない。そのために必要な図書資料をさらに購入するとともに、日本では入手が非常に困難な貴重書や古い資料を求めて、今後も、イギリス、アイルランド、アメリカの研究機関で調査を行う。現地では、研究機関に所属している学者との交流をさらに深める。上述した通り、従来、あまり顧みられることのなかった、アイルランドで筆写された中英語文学の研究に貢献する新たな挑戦を続けたい。
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