2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520281
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
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Keywords | 神秘主義 / 中世英文学 / ポライトネス理論 / ジャンル / 史的語用論 / 談話ストラテジー |
Research Abstract |
本年度は、説得的態度についての研究と、話題転換のために使われる副詞の調査分析を行った。まず、ノリッジのジュリアンのRevelations of Divine Love(以後Revelations)と、それに関する中英語宗教散文三作品(The Book of Margery Kempeに加えて、Ancrene Wisseと、チョーサーの『カンタベリ物語』のThe Parson's Tale)を対象に、Halmari(2005)が現代の政治的スピーチにおいて説得的態度を表していると指摘している十項目を調査した。その結果、説得的態度という観点から見ると、Revelationsは.その内容から同じジャンルとして扱われているThe Book of Margery Kempeより、むしろ説教的なThe Parson's Taleや、宗教的教化のための手引書Ancrene Wisseに近いことが明らかになった。この研究成果は、8月3日にウクライナのリヴィウ市で行われたThe Seventh International Conference on Middle Englishに於いて'Mapping of Rhetorical strateges Related to Persuasion in Middle Engish Religious Prose'の標題で発表した。 また、話題転換マーカーのうち、特に、現代英語の副詞nowに相当する中英語のnuに焦点を当てて、上記の四作品を調査した。その結果、Ancrene Wisseとhe Parson's Taleには、テクズト指示的なnuが多用されていることがわかった。このnuの使用には読者を語りに引き込む機能があるため、これらのテクストは会話の文体に近くなっており、nuがジャンルを区別する要素の一つになり得ると結論した。この成果は、9月16日にノースダコタ大学で行われた2011 International Anchoritic Society Conferenceに於いて'Adverbial Conectors as Topic-shift Markers in Genres Related to Middle English Mystical Writings'の標題で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、今年度は、読者に対する説得的態度を表す文体的特徴の有無を神秘主義作品とその関連作品で調べることに加えて、男性を含む全信徒を対象とした教化目的の書の調査にも着手する予定であった。しかしながら、読者に対する説得的態度を表す文体的特徴の調査分析を未だ分析を完全には終えていない状況であるので、男性を含む全信徒を対象とした教化目的の書の調査にまでは至らなかった。これが研究の遅れの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度計画していた男性を含む全信徒を対象とした教化目的の書の調査を行う。また、読者に対する説得的態度を表す文体的特徴の有無に関する調査についても、数作品では十分な分析ができないことが明らかになったので、作品数を徐々に増やして、引き続きその調査分析を行っていく。具体的には、昨年から予定していたMicolas LoveのThe Mirror of the Blessed Life of Jesus Christに加えて、読者対象が途中から変わったと考えられている興味深い作品Walter HiltonのThe Scale of Perfectionの調査分析を進めるつもりである。
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