2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520292
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
MEVEL YannEric 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90431486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島貫 葉子 東北大学, 大学院・文学研究科, 助教 (60547389)
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Keywords | 仏文学 / ベケット / 間文化的研究 |
Research Abstract |
本プロジェクト2年目にあたる当該年度は、フランス国際哲学コレージュ元校長であり現在パリ第8大学教授のブリュノ・クレマン氏を講師に迎え、フランス語を使用言語とする第2回ベケット・セミナーを行った。クレマン氏の研究は、1990年代半ば以降のベケット研究において重要な地位を占めている。特に、氏の専門である「レトリック」の観点から、「哲学者とは作家である」という仮定の上に立ち、文学と哲学の関係についての研究を進めている。2011年10月に東北大学で開催されたクレマン氏の講演は、まさにこの文学と哲学の交差の問題-ベケット作品を扱うにあたり非常に豊かな問題-をめぐって展開されたものであった。日本語通訳付きの当講演会は、専門分野を異にする学生や研究者が多数参加し、学際的なものとなった。また、東北大学東京分室で開催された第2回ベケット・セミナーの講演では、クレマン氏はベケットの小説『ワット』にレトリックの観点からアプローチし、いかなる点においてこの作品がその後の作品群に萌芽として含まれているかを示した。当セミナーでは、ベケットの演劇作品『クラップ最後のテープ』を間テクスト性の観点から分析した関西学院講師の藤原曜氏による研究発表も行われた。なお、研究代表者は一年を通じてベケット研究の国際学術誌Samuel Beckett Today/Aujourd'hui 『Filiations et Connexions/Filiations and Connecting Lines』(2012年刊行予定)の共同編集責任者として編集作業に携わる一方、前年同様、今年度の海外出張でもまたフランス国立図書館にてベケット批評における最新の研究成果の調査・収集を行い、それをふまえて主要図書を購入、東北大学フランス文学研究室におけるベケット研究関連の蔵書を充実させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトが、当初から、「フランス語」を使用言語とする「ベケット・セミナー」に、国内あるいは海外から、高水準のベケット研究者を招聘し、彼らと有望な日本人若手ベケット研究者たちとの対話や意見交換を実現させたためと思われる。とりわけブリュノ・クレマン氏(パリ第8大学)による2回の講演はプロジェクト推進の原動力となった。また、日本サミュエル・ベケット研究会の協力もその一因であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトは、日本において、ベケットのフランス語作品に関する研究を発展させることだけでなく、ベケットのフランス語作品と英語作品とを連結させる方法について考察することも目指しているため、今後は英語圏諸国やオランダにおいて「フランス文学」の分野で活躍している研究者たちに参加を呼びかける。彼らの講演や研究発表によって本プロジェクトのベケット・セミナーは国際的に認知されるであろう。また、フランス語圏でベケット作品に取り組んでいる演出家やアーティスト-日本ではまだあまり知られていない-を招き、日本のベケット研究者に紹介することも考えている。
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Research Products
(1 results)