2011 Fiscal Year Annual Research Report
「文芸の共和国」としてのプランタン=モレトゥス出版工房の総合的研究――第二期
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22520296
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
宮下 志朗 放送大学, 教養学部, 教授 (60108115)
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Keywords | ルネサンス / 出版の文化史 / フランス / ベルギー / 世界遺産 |
Research Abstract |
16世紀から17世紀にかけて、フランドルの商都アントウェルペンを拠点として、ヨーロッパのみならず新大陸をも視野に収め、しかも17世紀には、かのルーベンスの工房とも協力して、壮大な出版活動を展開した、プランタン=モレトゥス出版工房について、書簡集の繙読や、出版物の具体的な調査などを継続しておこなっている。また、未公刊のプランタンの『家事日記』も、写真撮影をおこなって、解読を継続しているが、正直な話、こちらについては難読というしかない。昨年度の発見である、フートハルス『フランドル語・フランス語対照ことわざ辞典』(プランタン、1568)におけるラブレーへの言及に関しては、2010年開催の「ブリューゲル版画の世界」展(Bunkamuraほか)のカタログに論文を寄せたわけだが、拙訳のラブレー『第五の書』の解説でも、ラブレーの影響に関する新発見として、一節を設けている(2012年5月刊行予定)。関連研究ではあるが、『第五の書』をもって、渡辺一夫以来の新訳を完成することができて、『本の都市リヨン』(晶文社)、『ラブレー周遊記』(東大出版会)と合わせて、ラブレー研究を集大成することができた。また、プランタンへの言及があるモンテーニュ『エセー』については、現在、その第5巻目を、鋭意翻訳中である(2012年刊行予定)。資料収集のために、2度、フランスに赴き、プランタンの生地といわれるToursにも久しぶりに行ったが、具体的な史料が残っているというわけではないらしかった。Caenは、またしても行きそびれてしまい、次年度の課題となった。印刷職人の心性に関しては、18世紀パリのものではあるが、ニコラ・コンタ『逸話集』の解読・研究を准め、ようやく翻訳を終えた(水声社より刊行を予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プランタンの『家事日記』の解読には難渋しているが、それ以外は、大体予想した成果は達成している。 深く関連する、ラブレーの翻訳はついに完成し、モンテーニュ『エセー』も、あと3巻を残す段階となったわけで、こちらに比重を置いて考えるならば、(1)と評価しても、過大ではないのかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
プランタン=モレトゥス出版工房は「世界遺産」となったにもかかわらず、わが国ではまだまだ知られざる存在であるから、本研究を基礎にして、ぜひともクリストフ・プランタンの伝記のような著作を世に問いたいと考えている。文書解読がメインの研究であり、長期的な視野で評価していただきたいし、可能ならば、第三期もおこないたいと願っている。
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Research Products
(2 results)