2012 Fiscal Year Annual Research Report
サルトルの初期批評文芸作品の生成コンテクストに関する研究
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22520305
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
重見 晋也 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (40303573)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドイツ占領下フランス文学 / サルトル / アクシオン・フランセーズ / コンフリュアンス誌 |
Research Abstract |
本研究計画に関連して平成24年度におこなった活動としては,1)フランス国立図書館(以下,BnFとする)における資料調査の継続,2)過年度までの調査で収集した資料の整理の2点である. 昨年までと同じく,BnFでの調査は研究における中心的な活動として位置づけた.調査について本年度は,ドイツ占領下のリヨンにおいて創刊された『コンフリュアンス』 誌を主な対象とする資料調査を,2013年3月16日から25日までの10日間にわたって,BnFのフランソワ・ミッテラン館およびアーセナル館にておこなった.また,過年度までの研究から,ドイツ占領下のフランスにおける出版事情のなかで,大きな役割のひとつを担っていたと考えられる「リスト・ベルンハルト」および「リスト・オットー」について,Webでのデータベース公開に供するためのデータ化を,大学院生の助力を得ておこなった. フランスにおける資料調査は,『コンフリュアンス』誌という文芸雑誌がどのような特徴をもっていたのかを把握するため,創刊号からの書誌情報の一覧を作成している.特に重視しているのは,同誌に掲載されている他誌の寸評や他誌が同誌に対して施した寸評を採録している記事であり,また同誌に掲載された広告類である. これらの記事を分析することによって,同誌が同時代の他誌とどのような関係を保っていたか,言い換えるならば 『コンフリュアンス』誌の出版ネットワークとでもいえるものの存在を概観することができると考えている. また,これらの調査の成果については年度末に中間報告書を刊行して,調査結果を公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度はサルトルの『ボードレール』の全体が刊行された「アンシダンス」叢書についての包括的な調査もおこない調査結果に基づいた論文を発表した.平成23年度は,刊行前の『ボードレール』を部分的に掲載したリヨンの文芸誌『コンフリュアンス』を対象として,ドイツ占領下における同誌の創刊と出版状況について調査をおこなった.平成24年度は,『コンフリュアンス』誌の出版ネットワークを明らかにするための調査を開始した. 調査では主として,他誌に掲載された『コンフリュアンス』誌の寸評について講評している『コンフリュアンス』誌の記事を詳細に収集・検討しているため,38号という同誌の限られた刊行数にもかかわらずかなりの作業量を必要としている.平成24年度の調査で15号分を収集することができた. また,並行して院生などの協力を得て,ドイツ占領下の文芸活動を特徴づけるドイツ軍による検閲リストの一覧作成についても完了した. 以上により,本研究計画は概ね計画通りに進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は,まずは『コンフリュアンス』誌を対象とした調査を過年度に引き続いて実施することが重要になる.この調査を通じて同誌を中心としたドイツ占領下のフランスにおける文芸活動の出版ネットワークの確認することができると考えている. 平成24年度に開始した『コンフリュアンス』誌の出版ネットワークに関する調査は,平成25年度に終了させる計画である.そのうえで,研究計画の最終年度において,本研究計画においておこなった調査全体を総括し,サルトルの初期文芸作品のひとつとして位置づけることができる『ボードレール』の生成コンテクストに関する研究をまとめる計画である.また調査によって収集した資料については,データベースとしてWebで公開することを計画している.
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Research Products
(1 results)