2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520310
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永盛 克也 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10324716)
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Keywords | ラシーヌ / 人文主義 / 悲劇 / ストア主義 / セネカ |
Research Abstract |
本年度の研究成果として以下の点が挙げられる。 1) ラシーヌ悲劇におけるセネカ作品の影響について、近代ヨーロッパに受け継がれたストア主義思想と悲劇ジャンルの関係という観点から考察を行った。文学史的展望と作品分析を総合しつつ、「ラシーヌにおける人文主義的教養」について具体的かつ説得的な例を提示することができたと考える。この成果は論文《Racine et Seneque. L'echec d'un ideal stoicien dans la tragedie racinienne》として発表した。 2) ラシーヌ悲劇の創作に関する研究史を総括した上で、作家自身の受けた人文主義的教育(修辞学、文献注釈)や作家に間接的な影響を及ぼしたと思われる同時代の著作などに注意を払いながら、悲劇作品とその序文、さらに草稿資料の分析を通して、ラシーヌにおいて古典作品の受容が創作へとつながるプロセスを整理して論じることができたと考える。この成果は論文「ラシーヌ悲劇の生成過程」として発表した。 3) 劇作家ラシーヌと国王の歴史編纂官としてのラシーヌを統一的な観点から理解するためには、16~17世紀における人文主義的歴史観について考察することが不可欠であることから、フランス国立図書館で関連文献の調査を行った。この調査は「ラシーヌにおける人文主義的教養」についての研究をさらに進めるために重要な意義をもつものだと考える。
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