2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520311
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中 直一 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 教授 (50143326)
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Keywords | 電子データ / ドイツ学 / 英学 / 翻訳 / 明治時代 |
Research Abstract |
1資料の電子データ(PDF資料)化 前年度に引き続き、ドイツ学およびドイツ学に影響を与えた英学に関する貴重資料として、以下の書籍を電子データ(PDF資料)化した:雑誌『獨逸語初歩』、雑誌『獨逸語学雑誌』(第11年、第13年~第22年)、雑誌『獨逸語』、日本独文学会学会誌『獨逸文學』(第1号~第20号)、『日本学士院紀要』、『「市川文吉送別文集」について』、『エルンテ』(全21冊)、『諳厄利亜興学小筌』等。なお『日本学士院紀要』、『「市川文吉送別文集」について』は、幕末・明治初期のドイツ学者である市川齋宮が書いたドイツ語文の翻刻およびその解説文である。 2ドイツ学を推進した人物についての研究 明治時代を中心に、ドイツ学を推進した人物についての調査を行った。その結果、文部官僚である井上毅が明治10年代に積極的にドイツ学を推進する立場を取ったことが明らかになった。井上毅は、自由民権運動に対抗する立場を取っていたが、彼によれば自由民権運動の背後には英学やフランス学といった学問があるとされた。英学やフランス学に対抗し、日本の政治風土にあった学問として、井上はドイツ学を推進した。第二に、ドイツ文学の導入に大きな功績を残した森鴎外について、とくにその翻訳に着目し、彼の翻訳技法が時代によってどのように変化したかを調査した。その結果、日本の大学で独文学科が成立する以前の段階では鴎外の翻訳も大意を大づかみにするという態度に導かれていたが、明治後期にいたると、鴎外の翻訳もきわめて厳密なものとなったという実態が明らかになった。本年度の研究では、井上毅や森鴎外の他、独逸学協会学校で実際にドイツ語を教授した大村仁太郎、日本で初めてのドイツ文学概説書を書いた澁江保の事績もあわせて調査し、彼らについての伝記的情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、散逸の危機にある明治時代のドイツ文学の翻訳書や学習書を電子データ化することが大きな目的であるが、本年度は予算の許す範囲で可能な限り、古書籍・雑誌のPDF化を行えた。それゆえ、本年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と評価しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究に引き続き、今後も明治時代を中心に、ドイツ学に関する古書籍の電子データ化を図る予定である。これまでは特にドイツ文学の翻訳書や明治初期のドイツ語教科書、学習書の電子データ化を遂行してきたが、今後は、語学文学以外の領域、たとえば社会科学の分野での明治初期のドイツ学関係書籍の電子データ化を図りたい。
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Research Products
(2 results)