2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520315
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津田 保夫 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (20236897)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / ドイツ文化史 / 公共性 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度まで行ってきた調査研究の成果を取りまとめつつ、不足していた部分や新たに生じた疑問点について補足的な調査を行った。 まずは、文学の受容的側面に関して、とくに18世紀半ば以降に文芸雑誌とともに文芸批評雑誌あるいは新聞が次々と創刊された点に着目し、『ドイツ百科叢書』や『最新文学通信』など当時の主要な批評雑誌のいくつかを調査し、それらに掲載された文芸作品や演劇作品などに関する書評や批評の内容と形式について検討した。その結果、それらの文芸批評雑誌が、文芸に関する一定の価値観や評価基準をある程度共有する読者共同体、あるいは作品に関する一定の解釈をある程度共有する解釈共同体のようなものの形成を促進する役割を果たしていたことがわかった。そしてさらに、それが同時に文学の創作的側面にも影響を及ぼし、いわばフィードバックされることによって、文学が自己組織化するような一種のシステム的なメカニズムが成り立っているらしい状況が浮かび上がってきた。 次に、そのようにシステム的に形成される文学とその公共圏形成的機能にもかかわらず、それが現実の社会を変革するような市民的公共圏としては十分に機能しえなかった原因について、考察を行った。そして、とくにシラーの文芸雑誌の分析から、当時の社会や市民的公共圏がフランス革命など外部の政治的事件からの影響による社会的変化に十分に対応できない状況の中で、文芸的公共圏は直接的に社会の変革を目指すのではなく、美的な領域を通じて人間精神の変革から始めるという迂回路を取らざるをえなかったが、そのような方法は当時の外部的社会変化に追いつくことができなかったと考えられる。その一方で、当時の出版や劇場など文学の制度的側面の進展が、外部的社会から隔離された文芸的公共圏の成立維持を可能にしていた状況も明らかになったのである。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)